【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「……すごい……」

 思わず、というようにアナベルの言葉が落ちる。どこからどう見ても、豪華絢爛な調度品が並んでいる。ずらりとただ並べられているわけではなく、きちんと見栄えが良くなるように置かれていた。

 執事服の男性に案内されて、二階へと足を進める。

 通された部屋に入り、「座ってください」とうながされて、二人はマントを脱いでソファに座った。

 ふわふわと柔らかいソファに、アナベルはそうっとソファを撫でる。

「……驚いた。こんな美人とエルヴィスが一緒にいるなんて」

 マントを脱いだから、男性はアナベルをきちんと認識できた。彼女の美貌に目を大きく見開き、ソファに座ったエルヴィスの肩を強めに叩き、ソファを撫でているアナベルに声をかけた。

「気に入った?」
「ずっと座っていられそう……」
「はは、お気に召したのならなによりだ。……さて、(うるわ)しのレディにご挨拶をさせてくれるかな?」

 男性はアナベルの近くに(ひざまず)き、彼女の手を取って手の甲に唇を近付け、チュッと軽い音を立てる。

 そして、黒に近い灰色の髪を揺らし、濃い青の瞳を細めアナベルを見上げ、ウインクをした。

「俺はダヴィドって言うんだ。ダヴィド・B・デュナン。よろしく。それで、エルヴィス。この綺麗なレディは?」

 挨拶を終えると、手を離して立ち上がるダヴィド。

 エルヴィスは彼の視線を受けて、グイっとアナベルの肩を抱いた。

「私の寵姫(ちょうき)だ」

 アナベルのことを寵姫として紹介したエルヴィスに、ダヴィドはこれ以上ないほど目を大きく見開く。

 観察するようにアナベルを上から下までじっくりと眺める。

 そんなダヴィドに、アナベルはにっこりと笑ってみせた。

 彼女の反応を見たダヴィドは、意外そうに「へぇ」と小さくつぶやく。
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