【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「どうしたの、アナベル。かわいい顔が台無しだよ」

 つんつん、とアナベルの頬を(つつ)く兄に、彼女は自分の思いを伝えた。すると、兄は目を丸くして「そっかぁ」と彼女の頭を撫で、視線を合わせる。

「アナベルの一番大切な仕事はね、いっぱい遊んで、いっぱい食べて、いっぱい寝て、大きくなることなんだよ?」
「でも、アナベルもおてつだい、したい!」
「うん、その心がけはすっごく大事。でもね、ほら、ごらん?」

 ぺたり、と手の大きさを比べるように、アナベルと兄の手が重なった。

「ほら、僕の手のほうが大きいでしょ? これはね、僕がいっぱい遊んで、いっぱい食べて、いっぱい寝た結果なんだよ。これくらい大きくならないと!」
「お兄ちゃんみたいに大きくなったら、おてつだいしてもいいの?」
「もちろん! ……あ、でもね。アナベルは可愛いから、いやしの効果はあるなぁ」

 手を離して、代わりによしよしと頭を撫でられる感触に、アナベルはくすぐったそうにはにかむ。

「それじゃあ、今日も元気にいっぱい遊んでおいで」
「はーい!」

 彼女は元気よく返事をすると、家の外へ遊びにいった。

 人見知りはするが、外で遊ぶのが好きだったのだ。

 きれいな花を見つけたり、四葉のクロバーを探したり、はたまた空を見上げたりすることが大好きな子ども。

 アナベルも、この村の人たちも、きっとずっとこんなふうに平和な時間が続いていくのだと、信じて疑わなかった。
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