【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
(――大丈夫。あたしには、彼がいる)

 そう思うだけで、強くなれそうだと思い、彼女は(あで)やかに口角を上げる。

「……受けて立とうじゃない。あたしだって、ただで転んだりしないわ」

 勝気に笑うアナベルに、ダヴィドが「うん、良い心意気だね」と力強い言葉を発した。

「とりあえず、現在はそのくらいかな。寵姫(ちょうき)たち全員を()きものにしたあとだから、おとなしめって感じ」

 メイドが三人亡くなったのが、おとなしめと聞いて、アナベルはわかりやすく、いやそうに表情を歪める。

「……そうか。政は、どうなっていた?」
「それはもちろん、お前の右腕がなんとかしていたよ。どこで見つけたんだ、あんな有能なヤツ」
「王家の血筋を辿りに辿って孤児院に送りつけられていたのを見つけた。確か、祖父の子どものはずだ」
「……それって、寵姫の子、だったってこと?」

 肯定するように首を縦に振る二人。

 アナベルはエルヴィスをじっと見つめて、小首をかしげた。

(寵姫の子を、どうして探したのかしら?)

 アナベルが考え込むように口をきゅっと(つぐ)むと、エルヴィスはダヴィドと視線を()わす。

「私よりも年上だが、事情を説明したらついてきてくれた。どうやら、彼も絶対的な味方がほしかったようだ」
「絶対的な、味方……」

 それはおそらく、アナベルにとってのクレマンたちのような存在だろう。

「そう。ダヴィドも私の絶対的な味方だ」
「俺は王妃が大っ嫌いだからね」
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