【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
「……もしも、すべてが終わったら……話したいわ」
「うふふ、それじゃああたし、がんばって長生きしないとね!」
「そうよぉ、あたしの秘密を知るまで、死んだらダメなんだから!」

 くすくすと笑い合うアナベルとアドリーヌ。

 もう遅いから眠ろう、と誘われてアドリーヌの隣に潜り込む。

 ベッドは二つあったが、同じベッドで眠ることにした。

 彼女に抱きしめられたまま、アナベルはその柔からな感触を堪能(たんのう)し、甘くて良い香りを吸い込んで小さく息を吐く。

「……アドリーヌさんって、良い香りがするわ……」
「うふふ。香水を集めるのが趣味なのよぉ。パーティーが終わったら、あたしの香水……とっておきのをあげるわねぇ……」

 うとうととしながら、そんなことを話した。

 アナベルは「それは楽しみね……」とつぶやいて目を閉じる。

 ぎゅうっとアドリーヌに抱きしめられながらも、睡魔はすぐにやってきた。

 ――明日はついにパーティー当日だ。

 夜に大勢の貴族が出入りする。

 明日――エルヴィスとアナベルの復讐が幕を開けるのだ。

 そのことを考えると、アナベルの胸は鼓動を早くする。

 ――それでも、アドリーヌと一緒に眠ることで、ぐっすりと深い眠りに落ちることができた。
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