【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
(――さすがだわ)

 くいっと腕を引かれた。

 アドリーヌが「行きましょ」とステージを指すのを見て、アナベルはこくりとうなずく。

 ダッシュでステージまで向かい、スカートが広がるように計算して飛ぶ。

 アナベルの手をステージの男性が取り、そのままステージに上がった。

 すっと鞘から剣を抜き、天井に剣を(かか)げるときらりと白刃が輝く。

 彼女は目元を細め、くるりと振り返り周囲を見渡す。

 それを合図に、男性たちがアナベルとアドリーヌ向かって剣を抜いた。

 剣があたりそうなギリギリのところで避け、剣を振るう。

 決められたパターンがあり、アドリーヌも同じように剣を使って周りを()せた。

 剣がぶつかり合う金属音。すれすれで(かわ)す緊張感。

 アナベルたちに向けられる、熱気ある視線。

 男性たちはステージの上で倒れ、ステージ上に立っているのはアナベルとアドリーヌの二人だけ。

 ふわり、とアドリーヌが微笑み、アナベルから離れた。

 タンタン、タタン!

 アナベルが靴を鳴らす。

 スカートの裾を持ち、いつもの剣舞が始まった。

 宙に剣を放り投げ、ステップを踏む。そして、ステップの最後の一歩のところで、腕を伸ばして横を向く。顔だけ正面を向けると、空中に放った剣が鞘に収まる。

 一瞬の静寂(せいじゃく)のあと――盛大な拍手がパーティー会場に響いた。
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