Will you marry me?
そう言った私に彼が何か言う前に、いきなり甲高い声が聞こえた。

「え? この方なの?」
部屋の中の先生を確認したのか、瑠奈がいきなり入ってきて彼の横に座る。

「大変失礼しました。娘の瑠奈です」
にっこりと昔からすべての男性を虜にしてきた笑顔を浮かべる。私の初恋の人も、学校の同級生も瑠奈のことしか見ていなかった。
「お父様、申し訳ありません。遅れてしまいました」
先生の容姿を見て瑠奈はこの人ならと思ったのだろう。いきなり声音すら変わった妹にため息が漏れそうになる。

しかし、予定通りなのだから、私はもう不要だ。
そう思い、その場から去ろうとした時、彼の声が聞こえた。

「確かに私にも妻が必要な年齢ですし、斎藤家との縁はありがたいですね」

先ほど断った時と同じトーンで彼は淡々と話す。やはり私ではなく、美しい瑠奈に心を奪われたのだ。
この人もただの男の人か。

建築に惹かれていただけに少し残念な気持ちになりつつ無言で立ち上がると、いきなりそっと手を握られた。
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