Will you marry me?
突然温もりを感じた私は、反射的に彼を見下ろすと、漆黒の瞳がそこにあった。
「こちらのお嬢さんを頂けるなら、仕事を受けましょう」
「え!!」
父はもちろん、その場にいた誰もがそう声を上げていた。

「どうしてお姉ちゃんなのよ!!」
「そうです、先生」
父も驚きが隠せないようで、声を荒げる。それは私も同じ気持ちだ。
「理由が必要ですか? こちらのお嬢さんを頂けるのならお受けしますが、断るということなら、私は一向に構いません」
きっぱりと言い切った彼に、父は「いえ、そのような娘でいいのなら」と媚びをうるようにへらっと笑った。
「そうですか、これからのことは後ほど秘書から連絡をさせます」
淡々と先生は言い、すぐに部屋を出て行こうとした。
お見送りをするのも忘れて放心状態の両親、鬼のような形相で怒り狂う瑠奈。
こんな状態で残された私の立場も考えて欲しい。そう思うがそんなこと言えるわけもなく、慌てて彼の後を追った。

「あの、どうしてこんなことを?」
そう問いかける私に、彼は足を止めて振り返る。
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