Will you marry me?
「見事な日本庭園だ」
「え?」
言われた言葉の意味が分からず彼を見上げると、まっすぐに見つめられる。
「この庭園は残すべきものだと思わないか?」
私の問いかけの答えはくれそうにもなく、閉口するが、私も庭園を残したい気持ちは誰にも負けない。
「それは、もちろんそうですが」
「無理な提案をしたことは百も承知だが、君にとって悪い話にはしない」
先ほどまでの冷徹さから、一方的で傲慢な人だと思っていた私は、毒気を抜かれてしまう。
「でも」
「話しだけは聞いて欲しい」
丁寧に頼まれてしまい、私は閉口する。こちらが騙すような形で呼びつけたにも関わらず、彼は私の意志も尊重してくれている。
結婚が嫌だとか、瑠璃の代わりだとか、それ以前に状況の整理ができていない。しかし、あの父の剣幕からも彼と話をしないということなど許されないだろう。
「わかりました」
「また連絡する」
それだけを私に伝えると、初めから車を待たせていたようで、あっという間に彼は車に乗り込んでしまった。
私はそんな車を呆然と見送った。

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