Will you marry me?
その後、母は泣きわめき、瑠奈は父にもう一度話をするように泣き落としていた。
甘やかされたとはいえ、ここまで自由で思い通りになると思っている妹を尊敬すらしてしまう。

「あの、菜々子さん」
遠慮気味に聞こえたその声に、黙ってその場に座っていた私は振り返った。

割烹着姿のスタッフがそこにはいて、とても困った顔をしている。

昼過ぎに先生は来たはずだったが、ハッとして時計を確認すると、いつの間にかチェックインのピーク時間は過ぎ、夕食も始まっている時間だ。

「どうしたの?」
きっとこの様子に声をかけるのをためらっていたと悟る。

「椿の間のお客様のご挨拶をお願いしたくて」
「お父様、ご挨拶の時間です」
椿の間は完全なプライベート邸で、今日は確か現警視総監ご一家がお泊り予定のはず。
私の声に流石に父も時計に視線を向けた。

「瑠奈、。あんな男だと知らなかったんだ。あんな冷血な男は菜々子で十分だ。お前にはもっといい縁談を用意するからな」
< 13 / 45 >

この作品をシェア

pagetop