Will you marry me?
「お父様、お姉ちゃんに何があるっていうの?」

そんな会話をしていると、旅館のエントランスの前に停まった黒塗りの高級車の後部座席のドアが運転手によって開けられる。
「菜々子、仕事はしばらく必要ない。すべて先生のために時間を使うんだ。もうこのまま帰ってくるな」

「え!」

まだ結婚するとも決まっていないのに、帰ってくるなと言われたことに驚いて目を見開く。そんな父の後ろで、見送りに来ていた仲居たちの顔色が変わったのがわかった。
「旦那様、それは困ります」
「なんだと!?」
「菜々子さんがいないと、館内のお花はどうするんですか?それに通訳も……」
今、私のやっている仕事を重要だと言ってくれる彼女の気持ちに、嬉しさが募る。こんな私でも役に立つことがあったのだと少しだけ救われた気持ちになった。
「そんなもの誰でもできるだろ!」
そう思った矢先、聞こえる声。やはり父は私を評価していないことを知る。それでも自分の仕事に誇りを持ってきたし、誰かに認められるためにやってきたわけではない。
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