Will you marry me?
「いえ、菜々子様が謝罪することはありませんよ。それに急な日程で申し訳ありません。今日しか時間が取れなかったので。申し遅れましたが、私は向井の秘書の桜庭紘一と申します」
頭を下げようとする彼を制して私は首を振る。初めに先生を巻き込んだのは父で、彼らは何も悪いことはしていない。
「お忙しいのですね」
「ええ、少しはセーブしてほしいところなんですが。あれではいつか身体を壊します」
そこまで言って桜庭さんは、少し表情を曇らせた。
「本当に仕事を始めると周りが見えなくなる質で。今日ももしかしたら仕事をしているかもしれません」
ため息交じりに言うと、桜庭さんはタブレットを操作する。そんな話をしていると、車は都内の閑静な高級住宅街を走っていた。この辺りは、デザイナー住宅が多く、とても魅力的な建物が多い。それでいてショップなどもあり、とても住みやすいと人気エリアだとテレビの特集で見たことがある。
「このあたりのお店で先生と待ち合わせですか?」
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