Will you marry me?
ブラックのシャツに、カーキのパンツというラフな格好だが、スタイルがいいので何でも似合う。今日は先日とは違い髪も固められていないようで、目元に前髪がかかっていた。

「謙太郎!! おい」
「あの、起こさないであげてください」

忙しく疲れていると聞いた今、眠っている彼の邪魔をしたくはない。

「申し訳ない。今日は君が来ると念を押していたんだけど、近代美術館の期日も迫っているのも事実できっと徹夜だったと思う」

そんな中、父の呼び出しに応じるなど、かなり無理をさせたに違いない。申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「あの、ここで私は待たせていただいても?」

「え? それはもちろん大丈夫ですが……。僕もこれから仕事がありまして」

少し思案するような表情を浮かべた桜庭さんに、私は先生に視線を向けながら言葉を続ける。

「そのうち目を覚ますでしょうし、私は大丈夫です」

今まで待つのは慣れているし、ぐっすりと眠る彼をそのままにしてあげたかった。

「そうですか」
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