Will you marry me?
なぜか安堵した様子の桜庭さんは、部屋を案内してくれる。

「この部屋はミニキッチンですが、お茶や簡単な料理は作れます。滅多に使わないですが。下のリビングには通常のキッチンもあります」

そう言いながら、隠されていた扉を開けると、冷蔵庫やコーヒーメーカー、トースターなど十分すぎるキッチン用品が用意されていた。

下にはさらにキッチンがあるなんて、何人でも住めそうだなと思う。
「僕と向井は高校からの同級生で友人なんですよ」

「そうなんですか?」

秘書とは言っていたが、時折親しさを感じる物言いに、どんな間柄なのだろうと思っていたが、そう聞いて納得する。

「ええ、ここは向井の自宅兼アトリエです。会社は別に都内のビルにありますが、一人で設計したいときや、休日はここにいることも多いです」

確かに、調べたところ本社は都内で、彼はその会社の代表取締役社長も務めていた。不動産や飲食店、ショッピングモールなど、多岐に渡る建築業を担っている会社だと記憶している。

< 23 / 45 >

この作品をシェア

pagetop