Will you marry me?
シーンと静まり返った部屋。彼の穏やかな寝息が聞こえてきて、私はなぜか慌ててしまう。

しかし、そっと彼を盗み見ると、やはりとてもきれいな顔をしていて、先日家で会った時よりもかなり若く見える。
薄手のシャツで眠る彼に私は部屋の中を見回した。そしてソファの上にあるブランケットを手に取り、そっと彼の肩に掛ける。それでも微動だにしない彼に、安堵して小さく息を吐いた。

どうしよう、初めて来た場所で何か勝手に触ることもできず、先ほどの書斎に行き、一冊だけ本を借りることにした。

やはり美術や建築の本が多く並ぶ中、彼の作品集を見つけてそれを手にして戻る。
座る位置も悩みに悩み抜き、彼の眠る場所から離れていることもあり、大きなソファの隅っこに腰を掛ける。大きな窓から見える木々。ここが都内だということを忘れそうだ。毎日旅館の仕事は忙しく、毎日が忙しなく過ぎていっていた。

身体が適度に沈み込む高級なソファに座り、私は写真集の一ページ目を開いた。

「そろそろ起きないか?」

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