Will you marry me?
「そうじゃなくて、どうして一緒に……」
「起きてみたらぐっすりと眠っていたから、俺ももう一度寝ようと思って。まあ、寝る場所はここしかないし一緒でいいかなって」
クスっと笑いながら話すその人に、私は数秒後声を上げていた。
「そんな! 起こしてくれればよかっただけです」
「それは菜々もだろ?」
「菜々?」
不意に呼ばれた聞きなれない名前を、自分でポツリと呟いていた。
「菜々子だろ? 菜々の方が言いやすいし、俺だけがそう呼ぶことにしたから」
蕩けそうな微笑みでそう言われ、私は逆に冷静になっていく。

これは政略結婚で、父が無理に始めたことだ。そして、彼はこれを受けるメリットなどないし、ましてや瑠菜ではなく、私にしたことは、ただ瑠菜より扱いやすいと思ったからだとずっとあの日から自分に言い聞かせていた。

今日だって、契約内容を確認に来ただけのはずだ。我が家の目的は先生に仕事をお願いすること、先生にはそれなりのコネと実績を約束する。
そういう話をするはずだった。なのに、どうしてこんなことに……。
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