Will you marry me?
「俺のことも謙太郎でいいよ」
目の前にいる彼は、この前見たような冷徹な人ではなく、コロコロと表情が変わり、穏やかで太陽のように笑う。

「何を企んでるんですか?」
キュッと唇を噛んでそう問えば、彼は驚いたような表情を浮かべる。
「企む?」
訳がわからないと言った彼を見ていると、かえって冷静になっていく。この人も父と一緒で仕事が第一の人だ。本音を見せないことなど簡単だろう。
「こんな無茶苦茶な結婚を受けるメリット先生にはありませんよね? ましてや、私なんかと」
「私なんかって、どうしてそんなことを?」
どうして? そんなことわかりきっている。今までずっと、誰もが私ではなく瑠菜を選んできたし、私など何もない。
確かに、先ほどの瑠菜の態度は褒められたものではないし、素を見たかもしれない。
だったら、瑠菜も私も両方断ればよかっただけだ。問いかけに答えず、さらに質問をぶつける。
「父が向井家との縁が欲しくて、先生に仕事を依頼したことに気づいてますよね?」
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