Will you marry me?
いや、正しくはもちろん先生に仕事も頼みたいが、向井家との縁も欲しいということだ。
間違った内容を訂正しようとしたが、先生も起き上がると私の隣に腰掛ける。
「ああ、そうだろうな」
あっさりと肯定されてしまい、ポカンとする。
「じゃあどうして? あなたにメリットはないですよね? 今も美術館の仕事が忙しいって聞きました」
「忙しすぎて死にそうだよ」
ため息交じりにそう言った彼は、柔らかな笑みを浮かべた。どうもこの笑みは調子が狂ってしまう。
「忙しいなら、結婚なんてすることないですよね」
「だから、菜々と結婚しようって思った」
「……え?」
一瞬、思考が止まってしまったが、その言葉にようやくこの結婚の意味が分かった気がした。
家政婦が必要という理由なら、確かに瑠菜より私の方が適任だ。先ほどの瑠菜の態度にそれを見抜いたのかもしれない。
「それに、そろそろ結婚しろと両親にも言われていて、見合いの話が多すぎて仕事に集中できないんだ」
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