Will you marry me?
聞きなれない言葉に、私は怪訝な表情をしていただろう。問いかけると、先生は小さく息を吐いた。
「仕事柄、信用で成り立っているところがある。スキャンダルになるようなことは避けたい」
確かに雑誌などでも特集を組まれるほどの人なら、不倫などご法度だろう。
「私は不貞行為なんてしません」
楽しい生活ということがどういうことかはわからないが、今まで家のことが忙しくて男性とお付き合いもしてこなかった。政略結婚とはいえ、他の人となど考えてもいなかった。
それよりも、彼ほどの人が、禁欲をするなどできるのだろうか。そこまで考えてハッとする。もしかして、これはそういったことが求められる?
そこまで考えて、そんなことありえないと思い直す。私なんか家政婦として置いてもらうだけだ。
先ほどの楽しい生活というのも、先生の気遣いなのだろう。
「そう、それならいい。じゃあ、結婚はきちんと俺の妻になることだと思って」
俺の妻、戸籍上そうなるのだから、当たり前だ。私はそう思い、「はい」と返事をした。
~※※※~
< 32 / 45 >

この作品をシェア

pagetop