Will you marry me?
目の前の彼女に俺は意味を理解しているのかと、一瞬問いそうになった。
「不貞はしない」「俺の妻」その言葉をどうとったのだろうか。
もちろん、すぐに身体の関係を求めたりするつもりはない。しかし、俺としてはこれからそこも踏まえて夫婦になっていきたいと思っている。
菜々子はとても儚くて、美しい。しかしどこか人生に諦めたようなところがあり、他人に興味を持たない気がする。きっと両親やあの妹に虐げられ、自分を殺してきたのだろう。
そんな彼女に、なんとか笑って欲しいそう思った。
当初、この話が来た時、もちろん断るつもりでいた。見事な庭園なのは知っていたからやってみたい仕事ではあったが、時期が悪い。ヨーロッパで賞を取ってからというもの、急激に忙しさが増しているからだ。


一ヵ月前

「謙太郎、それとご両親からこれも」

本社の社長室で雑務に追われていた俺に、紘一が沙月亭の資料と一緒に、それをポンと置く。
「またか……」
見なくてもわかる釣書に、俺は沙月亭の資料だけを手にする。
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