Will you marry me?
「聞きましたが……」
仕事が欲しいだけなら、私の機嫌など取らなくても……。どこまでも卑屈な考えをしてしまう自分が嫌になってくる。うまくやっていきたいと思ってくれているなら、私も努力をするべきかもしれないのに。
「俺が信じられないんだよな」
単刀直入な問いかけに、一瞬返事に詰まるが、本音はやはりなにか裏があるように思ってしまう。
「……はい」
嘘はつきたくなくて正直に答えた私に、謙太郎さんはなにも言わず私を見た後、何かを言いかけてやめて口を閉じた。
「わかった、気安く触らないし、菜々が嫌がることはしない」
きっぱり言い切ると、優しく微笑む。
「でも、俺は菜々と距離を縮めることを諦めるつもりはない。それだけは覚えておいて」
こんな拒否するような嫌な態度をとってしまったにもかかわらず、どうしてそんなことを言ってくれるの……。ご両親に言われただけの、形だけの妻ならば放置しておけばいいのに。
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