Will you marry me?
彼がどこまでも私に対する態度を変えず、優しく接してくれるのに、自分の頑なな態度が申し訳なくなってしまう。
「こっちに来てくれる?」
両親や妹のように命令することもなく、私の意志を尋ねてくれる彼に私は小さく頷いた。
リビングは先ほどの仕事部屋の倍はある広い開放的な空間で、大きなアイランドキッチンに、十人は座れるダイニングテーブル、モダンな数々のインテリア。

「美しいですね」
なんと形容するのがいいのかわからないが、随所に施されたデザインは温もりもあり、洗練されたモダンさもある。計算尽くされた曲線、窓から差し込む光など、どれも見事だった。

「ありがとう。ひとりだとこんな広さはいらないけど、クライアントに見せるための建築物だから、妥協はしていない」

まるで愛しい我が子を見るように、リビングに視線を向ける謙太郎さん。自分の仕事に誇りをもっていることを感じる。

「どうして建築を?」
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