Will you marry me?
「ん?」

つい口を突いてしまった疑問に、私はしまったと口元を押さえた。
しかし、そんなことを気にするようなそぶりはなく彼は口を開いた。
「確かに、両親と同じ道に進んで欲しいって誰もが思ってたし、俺も一時はこの世界を諦めようと思ったこともあったけど……」
そこで一度言葉を止めて、私を見下ろす。
「やっぱり好きだから」
自分のことではなく、仕事が好きだと言われているのに、“好き”という言葉にドキドキしてしまう。

「そう……ですか」
なんとかそれだけを言うと、私はリビングの窓際まで歩いていく。
大きな窓の外にはテラス、その向こうには緑の美しい芝生にプールまである。

「菜々、そこの扉開けてみて」
隣に続く扉のようで、その引き戸をゆっくり開けると、目の前に美しい琉球畳の茶室があった。
この間、お茶の作法も完璧だった彼。
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