Will you marry me?
「一緒にですか?」
生まれてから何かを命じられることはあっても、何かを一緒にやろうと言われたことは数少ない。
「俺は忙しくなると食べることを忘れることも多くて、終わった後にひとりで作れるのがこれだけだから」
一緒に作るということに、私が驚いたことには気づいていないようで、慣れた手つきで卵とパルメザンチーズでソースを作っていく。
「カルボナーラですか?」
つい、料理も好きな私は彼の手元を見て、問いかける。
「正解!」
嬉しそうに答えた彼に、つい私も笑ってしまう。
「菜々は生ハム切って。ベーコンはないから」
「はい」
彼の醸し出す雰囲気はとても優しく、穏やかだ。この家もそうだが、温かさがある。まだ信じることはできないが、頑なな態度は改めよう。そう思っていた時、謙太郎さんが持ってきたのは生ハムの原木だった。
見事な大きさのそれに、「これですか?」と驚いてそれを見つめた。
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