Will you marry me?
そして私は「お願い」という言葉に弱い。手にしていた生ハムを彼の口元に持っていく。恐ろしいほど綺麗な肌と、キリっとした深い漆黒の瞳がそこにはあり、嫌でもドキッとしてしまう。こんな美しい男性を前に、ドキドキしない女性などいないはずだ。
自分の胸の高鳴りの理由をつけると、私はすぐに彼から目を逸らした。
「うん、うまい。塩気はこれぐらいか」
そう言いながら、ソースの味を見ている彼にそんな自分を悟られないように、生ハムを切ることに専念する。
「菜々も食べてみろよ。うまいよ。ほら」
謙太郎さんは私が切り終わって皿に並べていた生ハムを一枚とると、私の口に放り込む。
その行為に驚きつつも、口の中に入った生ハムの味につい声を上げる。
「おいしい」
「な」
そんなことをしながら料理を作り、初めて会ったとは思えないほど心地よい時間を過ごしている自分に気づく。
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