死ねばレベルアップ! 行き詰ったアラフォーがなぜか最強少女に!? 第二の人生で目指す究極のスローライフ
52. 生命の煌めき
シアンはソリスを抱いてしばらく奥へと進んでいく。
どこまで行っても通路の両側には、びっしりと並んだサーバーが果てしなく続いていた。上下左右、視界の限りに広がるその光景に、ソリスは改めて圧倒され、ため息をついた。
自分たちの暮らしが機械の中にあった、というのは少し釈然としないものがあったが、この途方もないサーバー群を見てしまうとむしろ創った存在に対する深い敬意を感じてしまう。これほどの技術と努力を注いで自分たちを生み出してくれた、その行為はまるで神聖な奇跡のように思えた。
「おーう! コレコレ!」
赤い幾何学模様のカバーに覆われた、ひと回り大きなサーバーを見つけたシアンは、楽しそうに指差した。
「何ですか……? コレ?」
ソリスはその一際特別な作りのサーバーに小首を傾げた。
「コレがジグラートの心臓部、エクソディア・ハート。コレを直せばミッションコンプリートだゾ!」
シアンはソリスをそっとフロアに下ろし、エクソディア・ハートを調べ始める。
「直せば……元通りになるんですか?」
「おーう、そりゃもう。前よりピッチピチに元気になるよ。きゃははは!」
楽しそうに笑いながら、シアンは一枚のサーバーを選び出し、手をかけた。畳サイズのクリスタルのサーバーは内部の微細構造から繊細な輝きを放っており、まるで美術品のようにすら見えた。
うわぁ……。
自分の暮らしてきた星の心臓部がこのクリスタルの構造体だという。ソリスはその美しくも神秘的な話に圧倒されながら、ただじっとシアンの作業を見守っていた。
よっこいしょー!
掛け声と共に力任せにクリスタルを引っこ抜くシアン。
引っこ抜いた途端、クリスタルから輝きは喪われ、ただのガラス板みたいになってしまった。
「どれどれ……」
シアンは空中に青い画面を浮かべるとパシパシと何かを操作し、しばらく画面を食い入るように見つめていた。
ソリスは祈るような気持ちでジッとそのシアンの碧い瞳を見上げる。多くの人の人生、街に息づく文化、そして豊かな大自然の復活がこの瞬間にかかっているのだ。
ヨシッ!
シアンはニヤッと笑うとパシッと画面を叩いた。
ヴゥン……。
刹那、周りの全てサーバーが一斉に閃光を放つ。その膨大な数のサーバーの発光でジグラートは光で埋め尽くされる――――。
ウニャァ!
あまりの眩しさに思わず手で顔を覆ったソリス。
「ごめんごめん、もう大丈夫だよ」
シアンはソリスをそっと抱き上げると、スリスリと頬ずりした。
「こ、これで星は直ったんですよね?」
恐る恐る聞くソリス。
「まだだよ! いつの時代のデータを復元するかが残ってる。いつがいい?」
シアンはニヤッと笑いながらソリスの顔をのぞき込む。
ソリスは一瞬どういう意味か分からなかった。
「データを復元……? えっ!? それは過去に……戻れるって……こと?」
ソリスはその言葉のあまりに重大な意味に震えた。
「そうだよ? あまり昔は困るけど、お友達のまだ生きてる時代でもいいし、キミが子供になってる時でもいい。どうする?」
どんな時にでも戻れる、それはまさにタイムマシーンだった。失敗した時を取り戻せる、もう一度やり直せる、それはまさに神の力に思える。
ソリスはギュッと目をつぶった。セリオンの生きている時代? 仲間の生きている時代? 若返った時代? いろんなことがありすぎて頭がごちゃごちゃになってしまう。
でも、本当に大切なことは一つだった。
ソリスは決意をたたえた瞳でシアンを見る。
「仲間がまだ生きてる時にお願いします!」
子ネコのソリスは両手でシアンの手をつかんだ。
「アラフォーのおばさんに逆戻りだよ? 若返りの呪いは禁止したからもう若返れないからね?」
シアンはジッとソリスの目を見つめる。
ソリスはピクッと耳を動かしたが、大きく息をつくと髭をピンと伸ばした。
「アラフォー上等ですよ! それが私なんです!」
シアンは微笑んで優しくうなずくと、画面をパシパシッと叩いた。
ヴゥン!
サーバー群が虹色に一斉に煌めき始める。
うわぁ……。
サーバー群が本来の計算能力を取り戻し、一斉に稼働を始めたのだ。
一つ一つの輝きは、誰かの心の喜びであり、駆け出す筋肉のリズムであり、熟れたリンゴを揺らす風の優しさだった。地球に息づくすべての生命の活動が煌めきとなって、巨大なデータセンターであるジグラートを光で満たしていく。――――。
まるで無数の豪奢なシャンデリアに囲まれたような風景に、ソリスは圧倒される。
「す、すごい……綺麗だわ……」
「ミッションコンプリート! これで、今晩は恵比寿で松坂牛パーティだゾ!」
シアンは嬉しそうにピョンと跳びあがる。
「ま、松坂牛?」
「そう、お友達も連れてきていいゾ! くふふふ……」
シアンは楽しそうに笑った。
「えっ、えっ!?」
「じゃあ、いってらっしゃい!」
シアンはニコッと笑うと、目を白黒させている子ネコを高く放り投げた――――。
どこまで行っても通路の両側には、びっしりと並んだサーバーが果てしなく続いていた。上下左右、視界の限りに広がるその光景に、ソリスは改めて圧倒され、ため息をついた。
自分たちの暮らしが機械の中にあった、というのは少し釈然としないものがあったが、この途方もないサーバー群を見てしまうとむしろ創った存在に対する深い敬意を感じてしまう。これほどの技術と努力を注いで自分たちを生み出してくれた、その行為はまるで神聖な奇跡のように思えた。
「おーう! コレコレ!」
赤い幾何学模様のカバーに覆われた、ひと回り大きなサーバーを見つけたシアンは、楽しそうに指差した。
「何ですか……? コレ?」
ソリスはその一際特別な作りのサーバーに小首を傾げた。
「コレがジグラートの心臓部、エクソディア・ハート。コレを直せばミッションコンプリートだゾ!」
シアンはソリスをそっとフロアに下ろし、エクソディア・ハートを調べ始める。
「直せば……元通りになるんですか?」
「おーう、そりゃもう。前よりピッチピチに元気になるよ。きゃははは!」
楽しそうに笑いながら、シアンは一枚のサーバーを選び出し、手をかけた。畳サイズのクリスタルのサーバーは内部の微細構造から繊細な輝きを放っており、まるで美術品のようにすら見えた。
うわぁ……。
自分の暮らしてきた星の心臓部がこのクリスタルの構造体だという。ソリスはその美しくも神秘的な話に圧倒されながら、ただじっとシアンの作業を見守っていた。
よっこいしょー!
掛け声と共に力任せにクリスタルを引っこ抜くシアン。
引っこ抜いた途端、クリスタルから輝きは喪われ、ただのガラス板みたいになってしまった。
「どれどれ……」
シアンは空中に青い画面を浮かべるとパシパシと何かを操作し、しばらく画面を食い入るように見つめていた。
ソリスは祈るような気持ちでジッとそのシアンの碧い瞳を見上げる。多くの人の人生、街に息づく文化、そして豊かな大自然の復活がこの瞬間にかかっているのだ。
ヨシッ!
シアンはニヤッと笑うとパシッと画面を叩いた。
ヴゥン……。
刹那、周りの全てサーバーが一斉に閃光を放つ。その膨大な数のサーバーの発光でジグラートは光で埋め尽くされる――――。
ウニャァ!
あまりの眩しさに思わず手で顔を覆ったソリス。
「ごめんごめん、もう大丈夫だよ」
シアンはソリスをそっと抱き上げると、スリスリと頬ずりした。
「こ、これで星は直ったんですよね?」
恐る恐る聞くソリス。
「まだだよ! いつの時代のデータを復元するかが残ってる。いつがいい?」
シアンはニヤッと笑いながらソリスの顔をのぞき込む。
ソリスは一瞬どういう意味か分からなかった。
「データを復元……? えっ!? それは過去に……戻れるって……こと?」
ソリスはその言葉のあまりに重大な意味に震えた。
「そうだよ? あまり昔は困るけど、お友達のまだ生きてる時代でもいいし、キミが子供になってる時でもいい。どうする?」
どんな時にでも戻れる、それはまさにタイムマシーンだった。失敗した時を取り戻せる、もう一度やり直せる、それはまさに神の力に思える。
ソリスはギュッと目をつぶった。セリオンの生きている時代? 仲間の生きている時代? 若返った時代? いろんなことがありすぎて頭がごちゃごちゃになってしまう。
でも、本当に大切なことは一つだった。
ソリスは決意をたたえた瞳でシアンを見る。
「仲間がまだ生きてる時にお願いします!」
子ネコのソリスは両手でシアンの手をつかんだ。
「アラフォーのおばさんに逆戻りだよ? 若返りの呪いは禁止したからもう若返れないからね?」
シアンはジッとソリスの目を見つめる。
ソリスはピクッと耳を動かしたが、大きく息をつくと髭をピンと伸ばした。
「アラフォー上等ですよ! それが私なんです!」
シアンは微笑んで優しくうなずくと、画面をパシパシッと叩いた。
ヴゥン!
サーバー群が虹色に一斉に煌めき始める。
うわぁ……。
サーバー群が本来の計算能力を取り戻し、一斉に稼働を始めたのだ。
一つ一つの輝きは、誰かの心の喜びであり、駆け出す筋肉のリズムであり、熟れたリンゴを揺らす風の優しさだった。地球に息づくすべての生命の活動が煌めきとなって、巨大なデータセンターであるジグラートを光で満たしていく。――――。
まるで無数の豪奢なシャンデリアに囲まれたような風景に、ソリスは圧倒される。
「す、すごい……綺麗だわ……」
「ミッションコンプリート! これで、今晩は恵比寿で松坂牛パーティだゾ!」
シアンは嬉しそうにピョンと跳びあがる。
「ま、松坂牛?」
「そう、お友達も連れてきていいゾ! くふふふ……」
シアンは楽しそうに笑った。
「えっ、えっ!?」
「じゃあ、いってらっしゃい!」
シアンはニコッと笑うと、目を白黒させている子ネコを高く放り投げた――――。