廃墟に居ないでよ。

廃墟。

「ねーやっぱ帰ろうよー」

車がチッカチッカとハザード音を出している。

「なに?びびってんだ?」
運転席にいるさやはニヤリと口角をあげて言う。

「び、びびってないけど?」
私は自信ありそうに答えた。

車内から森の中の廃墟と目が合う。
私たち本当にこれからオカルトホラー撮影部の撮影であの廃墟を撮りに行くのだろうか。
自分の心臓は一定速度でなるハザードより速く聞こえた。

「じゃあレイ一人で行く?」って言葉を聞いたとき、私はさやの方に首をゆっくり動かし、顔を見つめながら「鬼か。」と言いそうになった。

「はは嘘嘘。一緒に行こ。」
さやは余裕そうな笑みを浮かべた後、車のドアを開け、外に出た。
車から出たときに見たさやの靴はヒールだった。

「さや、ヒールでこんなとこ来て大丈夫なの?」
私も車から出る。トランクを開けて、懐中電灯とカメラを取り出しているさやに聞く。

「あー。大学行ってそのまま来たからなぁ。まぁ大丈夫大丈夫。」

適当に大丈夫と言ってるさやをさやらしいなと思ってしまった。

靴を貸したいと思ったけど、今履いてるものしかない。どうしようと考えていると、

「ちなみに、レイっておばけとか信じてるの?」
と質問され、懐中電灯を渡された。

「信じてない。」

懐中電灯を受け取って、食い気味に言ってしまった。
歩くだけだし靴は大丈夫か。

「信じたくないの間違いじゃなくて?」

さやはこちらを見ずに、ビデオカメラを操作していた。

「う、うるさい!」

見たこともないし、信じてない。だけど、やっぱり恐怖はする。見えないものが見えたら、怖いよ。しかも外見も怖かったりするって聞くから。

「よし、行こうかレイ。」


「うん」
ジャリジャリと音を鳴らしながら進んだ。




「思ったより禍々しいね。この廃墟。」さやにそう言いながら、廃墟を見た。

改めて、廃墟を見る。
結構大きい。中も広いんじゃないかな。灰色の建材。何で作られてるのか分からない。
二階建てで、ツタが建物全体に絡まっている。
窓のガラスも全て割れている。廃墟らしい見た目だ。

入口の前に門があり、カラスが2羽止まっていた。お互い見つめあって、仲良しそうだ。

「今にも喧嘩しそうあのカラスたち。」とさやが言った。

「え?そう?」

と言った同時にカラスたちはカーと鳴きながら、勢い良くバトルを始めた。

「あ。仲悪かったんだ。」

カラスの黒い羽がふわふわと浮きながら地面に落ちたとき、廃墟から視線を感じた気がした。










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