星空ヘッジホッグ

第1話 とげとげ

〇天体学院(夕)
”天体学院”と書かれた看板のある正門
カフェとか入ってそうなおしゃれな校舎に夕日がさしている。
”1-A教室”の札。

月野ゆり(15)、青ざめた顔で着席している。夏服。

ゆりM「またやってしまったらしい……」

ゆりの周囲には引いた顔の女生徒たちが3~4人いる。

女生徒1「わかった、じゃあ私たちだけで行ってくるよ」

ゆり「けど、生徒だけで遠出するのは……」

女生徒2「みんな行ってるよ」

ゆり、生徒手帳の校則のページを女生徒たちにみせる。

ゆり「ほら。校則で生徒だけでの遠出は禁止されてるんだよ」

女生徒3「うん。だから、ゆり抜きで行ってくるって」

ゆり「……じゃあ、先生に言わないと」

女生徒1「なんでそうなるの!?」

ゆり「だって、目の前で校則破ろうとしているのだもの」

女生徒2「そんなに私たちのことが嫌い!?」

ゆり「好き嫌いと校則破ることって関係ある?」

女生徒たち、ドン引き。

日車潤(15)、ニコニコとしながら話しかけてくる。

潤「どうしたの」

女生徒1「潤くん」

女生徒たち、色めき立つ。

女生徒2「かくかくしかじか」

潤、にこにこしながら頷く。

潤「なるほど!……けど、お母さんと行くことにしたんでしょ?」

潤、女生徒たちに悪戯っぽく笑う。

女生徒たち、はっとして頷く。

女生徒3「うん。そうする」

ゆり、表情が明るくなる。

ゆり「そうなの?なら私も行きたいな」

女生徒たち、首を横に振る。

女生徒1「また今度ね」

ゆり「うん?」

女生徒たち、ばたばたと立ち去る。

ゆり「行きたかったな」

潤、おかしそうに吹き出す。

潤「行きたかったんだ」

ゆり「保護者がいるなら校則違反にならないから」

潤、ゆりの前の席に座る。

潤「親がついてきて楽しい?」

ゆり「親が付いてないと楽しいとか以前に、校則違反だよ?」

潤「バレなきゃよくない?」

ゆり「いつバレるかわからないのに、楽しめないよ」

潤「へー、真面目なんだね」

ゆり「校則を守るのは当然のことだから」

凛とした感じの水月凜々花(15)が教室を覗き込む。

凜々花「潤~。やっと見つけた。帰ろ~」

凜々花、ゆりを見てハッとする。

凜々花「ごめんなさい。お話中だった?」

ゆり「ううん。特には」

潤「凜々花!ごめん!帰ろ」

潤、立ち上がる。

凜々花「失礼なこと言われなかった?この人、ずっとデリカシーないから」

潤、しょぼんとした顔。

ゆり「何にも。他の子たちは話しかけられて嬉しそうだったよ」

潤、悪戯っぽく言う。

潤「ゆりちゃんは嬉しくなかったの?」

ゆり、は?という顔。

凜々花、潤の耳を引っ張る。

凜々花「よくもまぁ彼女の前で堂々とナンパできたもんね」

潤「いててて」

凜々花「ごめんね、いつもこの調子なの」

ゆり、引き気味。

ゆり「ううん」

潤「じゃあね、ゆりちゃん」

潤、凜々花に引っ張られて教室から出ていく。

ゆり、教室に1人。

〇ゆりの家(夜)

建売住宅。満点の星空。

ゆりの部屋。綺麗に整理整頓されている。
いろんな動物のぬいぐるみ。五十音順。

ヘアバンドをしたゆり、机に向かって勉強中。

ゆり、シャーペンを置いて大きく伸びをする。

ゆりM「行きたかったな……」

ゆり、ベッドに寝転がる。

ゆり、潤を思い浮かべる。

ゆりM「変な人だった。助けてくれたのかな」

ゆり、枕をぎゅっと抱きしめる。

ゆりM「彼女いるんだ。美人でやさしそうだったな」

ゆり、さらに枕を抱きしめて、ため息を吐く。

ゆりM「私も、誰かと仲良くなってみたい」

窓のあかり、上には満点の星空。




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