美形義兄×5! ~人間不信な姫の溺愛生活~
夜出かけて行った雫宮を追いかけ、出て行った葦零。
玄関に行くにはリビングを通る必要があるので、雫宮も来ると思っていた。
でも来たのは、葦零だけだった。
その葦零に訊くと、雫宮は3階の窓から飛び降りて行ったそうな。
すごい、と思う。
人を讃えるなんて昔の俺はしなかっただろうけど、雫宮に女特有の嫌悪感はない。
義妹としてかわいがろうとなんてしていない。
きっと、兄弟全員。
これからのコトにちゃんと案はあるから・・・。
雫宮の運命は、俺の運命。
雫宮の望みはできるだけ叶えてあげようと思う。
でも・・・ほかの兄弟たちとの恋愛話はしないでね?
そんなコトしたら・・・雫宮の身になにが降り注ぐか、分からないから。
「おやすみ」
リビングの椅子に座ってると、俺以外の兄弟たちが自室に戻っていく。
そんな中俺だけは風呂にも入らず、リビングで待っていた。
葦零と・・・できれば雫宮を。
                                                                   
「ただいまー」
葦零の声がして、席を立つ。
「おかえり、雫宮は?」
「んー・・・撒かれちゃった」
リビングに入ってきた葦零はケロッと笑い、手を洗ってから椅子に腰を下ろした。
「まだお風呂入ってないの?」
「ん、雫宮の居場所が分かったら行こうと」
でも撒かれちゃったかー・・・。
俺はそっとスマホを出し、画面を見る。
ピンクに光る丸の光は途中で切れていて、やっぱりとため息をついた。
雫宮に、GPSを付けていた。
きっと、最初から気づいていたんだと思う。
それで、こんなトコで落としたんだ。
ピンクの光が止まっているのは、繁華街の前。
繁華街と言えば、不良の巣窟だ。
なんでそんなトコに行って・・・。
「葦零、散歩してくるね」
「ん-?分かった、気を付けてねー」
ホントに散歩だと信じてくれたのか、葦零は手を振って送り出してくれる。
素早く外に出た俺は、全速力で走って繁華街まで向かった。
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