美形義兄×5! ~人間不信な姫の溺愛生活~
 次の日──。                                                                
私は今日(昨日の深夜も?)も家を抜け出し、早朝に帰ってきた。
準備をして私はカバンを玄関に置き、朝ご飯にコーヒーと小さなパンを飲んで迎えを待つ。
そして朝8時。                                                         
                                                                  
──ピンポーン──                                                        
                                                                  
鍵を開け、外に出ると。
「・・・」                                                           
外には大きな高級車がある。
黒塗りの・・・セダン、だろうか。
車には興味ないからなぁ。
まぁ、私が興味あるコトなんて無いんだけど。
「初めまして。キミが・・・雫宮ちゃん、かな?」
「・・・はい」                                                                
車から出てきた50代くらいの男性。
それに続いて5人の男の・・・子?
あ・・・皐月兄弟(さつききょうだい)・・・。
皐月兄弟とは、学園内で一番の美形軍団と言われる兄弟で、5人ともタイプが違うから好みの男子を見つけやすいんだとか。
人に興味の無い私が知っているくらいだから、すごく有名なんだ。
「初めまして。雫宮って呼んでいい?」
一番前に立っていた男の子が話しかけてくる。
「・・・はい」                                                                        
いくら顔が整っていたとしても、私は気にならないし興味を持つコトは無いに等しい。
真顔で見つめ返すと、男の子は大きく目を見開いて、何故か嬉しそうに頬を緩めた。
                                                               
「僕は伊毬(いまり)。皐月家の長男だよ。同じ学園の高等部で、3年なんだけど・・・知ってるかな?」
                                                                    
伊毬さんは温厚な王子と知られている人。
「・・・はい。噂程度に」
「そっかそっか。良かった」
良かった・・・?                                                              
自分のコトを噂されて、知らない相手に知られて、なにが良かった?
目立ちたいの?みんなに自分のコトを知ってほしいって思うの?
変わった人・・・いや、人間というモノはそんなんなのか。
                                                                  
「・・・俺、朔冴(さくさ)・・・高2・・・。雫宮?よろしく・・・」
                                                                 
「・・・はい」                                                                                               
朔冴さんは、気だるげで儚く、今にも散ってしまいそうな花なんだそう。
                                                                 
皇逢(こうあ)。鈴蘭の双子の兄。高1」
                                                              
さらっと自己紹介を終えた皇逢さんは女嫌いなクールな人で、近づくのはとても困難らしい。
                                                                 
「俺は鈴蘭(すずらん)だよ。皇逢の言った通り、皇逢の双子の弟で高1だよ。仲良くしようね、雫宮」
                                                                  
鈴蘭さんは爽やか王子の名で有名な人で、常に余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)
                                                                  
「僕は葦零(いれい)~!中3だよっ」
                                                                 
最後に葦零さんはどちらかと言うと、弟みたいな。
あざとい・・・って言うらしい。
「・・・どーも。雫宮です」
短くそう言うと、葦零さんがニヤリと(あや)しい笑みを浮かべた後、すぐに可愛いらしい(?)笑顔に戻った。
「ね、雫宮!」                                                            
「・・・はい」                                                       
なんだろう。                                                                 
なにを言われても心には届かないけど、それがありがたくなるような言葉かもしれない。
「僕が雫宮を甘く優しく(しつ)けてあげるっ」
躾ける・・・?                                                             
私の態度があまりにも不快だっただろうか。
まぁ、直せと言われたら直せる。
前提として、直そうと思える相手に対して、だが。
「葦零の躾けは厳しいぞ・・・」
ぽつりと(こぼ)した皇逢さんの言葉に心の中で首をかしげる。
「そうだね・・・甘くって言ってる手前、雫宮がトロトロの甘い美少女になっちゃいそうだね・・・」
鈴蘭さんが同意し、伊毬さんが苦笑した。
その時だった、ちょうど。
「・・・誰ですか?姫様を躾けるなどと不敬なことを言ったのは」
「おー、姫!4時間くらい?ぶりやな!」
見知った顔が2人現れたのは。
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