美形義兄×5! ~人間不信な姫の溺愛生活~
「・・・っう」
ポロリ、と涙が手におちる。
「・・・兄がいたの」
零兄に訊かれて、私は頷く。
「妹を泣かせるなんて・・・」
零兄はなにを思ったのか、怒りに顔をゆがめている。
それが、許せなかったのは当たり前だ。
「お兄ちゃんは私も守った、の・・・!泣かせてなんてない!お兄ちゃんに泣かされたコトなんてっ・・・」
あるわけない。
お兄ちゃんは私を笑顔にしてくれていた。
おもちゃのように私を遊ぶ義兄(あなた)たちとは違う・・・!!
「・・・そっ、か・・・」
零兄は納得していないみたいだったけど、なにかいうのはやめたらしい。
「・・・ごめんね、雫宮。もう、やめよう」
ドレス、脱いでいいよと零兄に言われる。
「躾けなんて、必要なかった。雫宮は今のままでいいね」
零兄はどこか満足げな笑顔で言うと、私を立たせてくれた。
「これからもかわらないでね。僕がそのお兄ちゃんになるから」
なれるはずが、ない。
だって私が好きなお兄ちゃんは、もういないんだから。
明るくて、一緒にいると安心できて・・・。
そんなお兄ちゃんは、私を追いてた行ったんだから。
一緒に逝こうって何度思ったコトか。
お兄ちゃんが亡くなって、お母さんもいなくなって、お父さんが再婚して、義姉が2人できて、養子縁組を組んで、義兄が5人できた。
それだけたくさんのコトがあったけど、感情があったのはお兄ちゃんの死だけ。
お兄ちゃん、か・・・。
会いたい、なぁ・・・。
もういいか、逝っても。
殺夜も涙悪も・・・私がいなくて困るほど弱くない。
いっそ、このまま楽になった方が・・・。
「・・・あれ、雫宮?」
「・・・っ鈴兄・・・」
階段から鈴兄が降りてくる。
「・・・雫宮?その服・・・って、泣いてたの?」
目じりにたまった涙をそっと拭ってくれた鈴兄にもっと泣けてきた。
「どうしたの・・・?葦零となにかあった・・・?」
その仕草が、声が、表情が。
まるでお兄ちゃんみたいで・・・。
・・・あれ?
「・・・お兄、ちゃん・・・?」
鈴兄の髪色が変わっていく。
髪だけじゃない、瞳の色もだ。
この、色は・・・。
「雫宮?どうしっ・・・」
「っお兄ちゃん・・・!」
声は違う。
なのに・・・目の前にいる人が、お兄ちゃんに見えて仕方がなかった。
思わず、ぎゅっとその体に抱き着く。
「し、雫宮・・・?どうしたの・・・・お兄ちゃんって」
あぁ、お兄ちゃんが生きてる・・・。
また、会えた。
私の唯一・・・お兄ちゃんだっ・・・。
「お兄ちゃん・・・」
お兄ちゃんは死んでなかった。
私を、置いて行ってはいかなかった・・・!
「お兄ちゃん・・・ずっと、そばに」
「・・・いるよ・・・恋人としてね」
目の前の人が最後になんて言ったのかは分からない。
ただ・・・この腕のぬくもりに安心して、私は眠りについた。
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