美形義兄×５！ ～人間不信な姫の溺愛生活～

兄にはなりたくない

〈side　鈴蘭〉
「・・・すぅ」
腕の中で眠る雫宮を見下ろす。
「お兄ちゃん・・・」
その顔は安心しきっていて、男として意識されてないと嫌でも理解した。
「雫宮・・・」
どうしようか。
このままベッドに運ぶ？
それとも・・・食ってやろうか。
「・・・がおー」
耳元でささやく。
向こうのソファーには葦零が座っているから、そっと雫宮を抱えた。
ふんわりとした生地のドレスと装飾。
「お兄ちゃん、か・・・」
雫宮には本当の家族・・・兄がいたんだろうか。
どんな兄だ？
年は？髪は？瞳は？
・・・どうやって、雫宮に懐かれた？
爽やかじゃなかったんだろうか。
完ぺきじゃなかったんだろうか。
美少年じゃなかったんだろうか。
雫宮は、平凡な男が好きなのか。
兄を・・・兄みたいな男が、好きなのか。
幼女が『パパと結婚するのー』というのは分かる。
雫宮は・・・それの、兄版？
雫宮は・・・雫宮の兄は、なにをした？
努力か？
才能か？
暗示か？
性格、か？
どんな男だったんだろう。
どんな男が、雫宮はいいんだろう。
どんな男になったら・・・雫宮は選んでくれるの？
それとも・・・雫宮は、恋人じゃなくて兄を望んでいる
俺は・・・兄、義兄として必要とされるだけでは満足できない。
男として・・・恋人として必要とされるまで、雫宮を離せない。
かわいそうな雫宮・・・。
こんな執着強い男に気に入られるなんて・・・。
「・・・覚悟してね？」
もう、俺から離れるのが不可能だって、思い知らせてあげる。