美形義兄×5! ~人間不信な姫の溺愛生活~
あれから1週間がたち──。
私と雲母はすっかり仲良しになった。
前は『皐月兄弟キャー』だったのに、今では義兄たちと仲が悪い。
「雫宮ー!」
後ろから気配がする。
走ってきているけど、安全な気配だ。
ドンっと背中に衝撃が走る。
「・・・はよ、雲母」
ぎゅっと抱き着いてきた雲母に挨拶をすると。
「ねぇ、鬱陶しい。雫宮から離れて」
べりっと鈴兄に引き離される。
それに不満そうな声を上げたのはもちろん雲母だ。
「なによ偉そうに!義兄の分際で親友に文句言わないでくれますー?」
どうやら雲母は私と一番仲が良い鈴兄を特に嫌っているらしい。
逆に、皇兄のコトはまだ許せるんだとか。
一応、鈴兄は雲母の先輩。
だからたまに、たまーに敬語は使っている。
ただし、それは煽る時に限定される。
「まったく、雫宮に悪影響だな」
「ふんっ、そんな笑顔で愛想振りまいて女侍らせて・・・そんな人のほうが雫宮に悪影響だと思いますがー?」
この2人は私の前に限らず、ずっと喧嘩しているらしい。
「俺は情報を得るために愛想を振りまいてるんだよ。そんなコトも分からないの?」
「意味不明で絶対彼女を不安にさせる行為をする奴は女の敵!つまりは私の敵で、雫宮にはふさわしくない!」
・・・あぁ、目立っている。
「じゃあ高等部のアイドル様はさっさとどっか行ってくださーい。皇逢様、雫宮のコトは任せてください!」
雲母は鈴兄を睨み、皇兄にニッコリ笑った。
「これは・・・皇逢を狙ってるわけじゃなさそう?・・・だとしたら・・・」
毬兄が苦笑しながら雲母を見て、それに代わって零兄が首を傾げた。
「雫宮の相手に皇逢がふさわしいと思ってる・・・みたいだね」
「・・・完全に姉目線」
朔兄もぼそっとなにかを言う。
「なにか言いましたー?そこらのアイドル様ぁ」
見下したような雲母の口調に、朔兄の額に青筋がピキッと。
「・・・雫宮、こいつとは絶交したほうがいい」
朔兄は怒ってるのか、雲母と私をさらに遠ざける。
一方皇兄はご機嫌そうに私の頭を撫でていた。
「雫宮、教室行こ!」
雲母が鈴兄を、隙をついてするりとかわし、私のもとに来る。
「・・・ん、じゃーね」
高等部組に手を振り、私と雲母、零兄は中等部の校舎に歩いて行った。
「・・・あれ、雫宮?」
移動教室で教室に帰っていると、書類を持った毬兄とバッタリと出くわした。
「・・・」
無言。
どっちも喋らず、私は首をかしげる。
「えっと・・・行くね」
声を掛けてそこを去ろうとすると、毬兄の手首を掴まれた。
「・・・ごめん、時間ある?」
「ん・・・数分なら」
「じゃあ、こっち来てほしい」
いつになく真剣な顔をする毬兄。
・・・ついて行っても、いいよね・・・?
ちょうど今、雲母は先生に頼みごとをされていていない。
そして毬兄に連れていかれたのは、暗い非常階段。
「あはは、ムードないねぇ・・・」
自分で選んだ場所なのに、苦笑する毬兄にいつもと違うコトに気づく。
なんか・・・緊張してる?
固くなってて、いつものキラキラ王子様モードはない。
家での毬兄に近い、けど・・・リラックスしている時の顔とは違う。
ホントにどうしたんだろ・・・。
「ねぇ雫宮・・・僕たち、『義理の』兄妹だよね?」
『義理の』を強調して訊いてくる毬兄に戸惑いながら頷く。
「義理の兄妹ってさ・・・結婚してもいいんだよ。血縁上の家族じゃないから」
「・・・うん?」
それくらいは知ってる。
でも、なんで今それを言う・・・?
「僕ね、雫宮と兄妹になる前から好きだったんだ」
「・・・なにを」
「雫宮を」
「・・・私も、毬兄のコト嫌いじゃないけど」
愛情確認かなんか・・・?
「それ、義兄として、じゃない?」
「・・・毬兄も、義妹として、でしょ」
「僕は違う」
毬兄は「鈍感だなぁ」と笑った。
「こうしたらわかるかな?」
毬兄の顔が近づいてくる。
そして──。
「・・・っ」
ちゅ、というリップ音とともにその顔が離れた。
「僕はね、雫宮のコト義妹として見てない。1人の女の子なんだよ。ずっと、好きだった」
熱っぽい視線を送ってくる毬兄に、返答に困る。
普通の先輩から言われたら、『だからなんですか』で済ませる。
くだらないコトなんだから、耳を傾ける必要もない。
でも・・・目の前にいるのは皐月家の長男で、長兄で、私にとって義兄だ。
無視できる存在ではない。
軽い言葉選びをしてはいけない。
皐月家に住まわせてもらってるんだから、気持ちの尊重は大事。
そう思うと、いつもと違って考えるのが難しい。
「いま・・・なにしたの」
「キスも知らない?初心だねぇ」
・・・いや、知ってるんだけど。
「口づけっていうんだよ。好きな人にするの」
「・・・好き同士じゃ、ないの」
「ん-・・・まぁ、そうだよね。我慢できなかった」
あはは、と笑い飛ばす毬兄。
キスは、知ってる。
鈴兄にされたし、唇以外に。
でも今は・・・しっかり、唇にされた。
どういうつもり・・・?
「雫宮・・・僕の彼女になって、一緒に皐月家を継ごう?父さんは雫宮に継いでほしいみたいだけど・・・皐月家の長男と養子の雫宮が結婚して家を継ぐのが一番と思わない?」
・・・毬兄は家を継ぎたいんだ。
そんな私の考えを読んだのか、毬兄はゆるゆると首を横に振る。
「雫宮と一緒じゃなかったら、継がない。雫宮は跡取りだし、雫宮と付き合えるなら一緒に家を継ぐくらいの覚悟はあるよってコト」
「ふぅん・・・私もそれがベストだって思ったら、いーよ。・・・でも、しばらく考える期間ちょーだい」
「・・・わかったよ」
毬兄は納得したのか、仕方なそうに頷いた。
「おっと、チャイム鳴っちゃうね」
ほら、教室行かないと、と毬兄に急かされる。
「・・・ん」
私は毬兄に言われた通りに帰ったんだけど・・・。
高等部にいるはずの毬兄が何故中等部にいるのか。
それに気づいたのは授業が始まった後だった。
私と雲母はすっかり仲良しになった。
前は『皐月兄弟キャー』だったのに、今では義兄たちと仲が悪い。
「雫宮ー!」
後ろから気配がする。
走ってきているけど、安全な気配だ。
ドンっと背中に衝撃が走る。
「・・・はよ、雲母」
ぎゅっと抱き着いてきた雲母に挨拶をすると。
「ねぇ、鬱陶しい。雫宮から離れて」
べりっと鈴兄に引き離される。
それに不満そうな声を上げたのはもちろん雲母だ。
「なによ偉そうに!義兄の分際で親友に文句言わないでくれますー?」
どうやら雲母は私と一番仲が良い鈴兄を特に嫌っているらしい。
逆に、皇兄のコトはまだ許せるんだとか。
一応、鈴兄は雲母の先輩。
だからたまに、たまーに敬語は使っている。
ただし、それは煽る時に限定される。
「まったく、雫宮に悪影響だな」
「ふんっ、そんな笑顔で愛想振りまいて女侍らせて・・・そんな人のほうが雫宮に悪影響だと思いますがー?」
この2人は私の前に限らず、ずっと喧嘩しているらしい。
「俺は情報を得るために愛想を振りまいてるんだよ。そんなコトも分からないの?」
「意味不明で絶対彼女を不安にさせる行為をする奴は女の敵!つまりは私の敵で、雫宮にはふさわしくない!」
・・・あぁ、目立っている。
「じゃあ高等部のアイドル様はさっさとどっか行ってくださーい。皇逢様、雫宮のコトは任せてください!」
雲母は鈴兄を睨み、皇兄にニッコリ笑った。
「これは・・・皇逢を狙ってるわけじゃなさそう?・・・だとしたら・・・」
毬兄が苦笑しながら雲母を見て、それに代わって零兄が首を傾げた。
「雫宮の相手に皇逢がふさわしいと思ってる・・・みたいだね」
「・・・完全に姉目線」
朔兄もぼそっとなにかを言う。
「なにか言いましたー?そこらのアイドル様ぁ」
見下したような雲母の口調に、朔兄の額に青筋がピキッと。
「・・・雫宮、こいつとは絶交したほうがいい」
朔兄は怒ってるのか、雲母と私をさらに遠ざける。
一方皇兄はご機嫌そうに私の頭を撫でていた。
「雫宮、教室行こ!」
雲母が鈴兄を、隙をついてするりとかわし、私のもとに来る。
「・・・ん、じゃーね」
高等部組に手を振り、私と雲母、零兄は中等部の校舎に歩いて行った。
「・・・あれ、雫宮?」
移動教室で教室に帰っていると、書類を持った毬兄とバッタリと出くわした。
「・・・」
無言。
どっちも喋らず、私は首をかしげる。
「えっと・・・行くね」
声を掛けてそこを去ろうとすると、毬兄の手首を掴まれた。
「・・・ごめん、時間ある?」
「ん・・・数分なら」
「じゃあ、こっち来てほしい」
いつになく真剣な顔をする毬兄。
・・・ついて行っても、いいよね・・・?
ちょうど今、雲母は先生に頼みごとをされていていない。
そして毬兄に連れていかれたのは、暗い非常階段。
「あはは、ムードないねぇ・・・」
自分で選んだ場所なのに、苦笑する毬兄にいつもと違うコトに気づく。
なんか・・・緊張してる?
固くなってて、いつものキラキラ王子様モードはない。
家での毬兄に近い、けど・・・リラックスしている時の顔とは違う。
ホントにどうしたんだろ・・・。
「ねぇ雫宮・・・僕たち、『義理の』兄妹だよね?」
『義理の』を強調して訊いてくる毬兄に戸惑いながら頷く。
「義理の兄妹ってさ・・・結婚してもいいんだよ。血縁上の家族じゃないから」
「・・・うん?」
それくらいは知ってる。
でも、なんで今それを言う・・・?
「僕ね、雫宮と兄妹になる前から好きだったんだ」
「・・・なにを」
「雫宮を」
「・・・私も、毬兄のコト嫌いじゃないけど」
愛情確認かなんか・・・?
「それ、義兄として、じゃない?」
「・・・毬兄も、義妹として、でしょ」
「僕は違う」
毬兄は「鈍感だなぁ」と笑った。
「こうしたらわかるかな?」
毬兄の顔が近づいてくる。
そして──。
「・・・っ」
ちゅ、というリップ音とともにその顔が離れた。
「僕はね、雫宮のコト義妹として見てない。1人の女の子なんだよ。ずっと、好きだった」
熱っぽい視線を送ってくる毬兄に、返答に困る。
普通の先輩から言われたら、『だからなんですか』で済ませる。
くだらないコトなんだから、耳を傾ける必要もない。
でも・・・目の前にいるのは皐月家の長男で、長兄で、私にとって義兄だ。
無視できる存在ではない。
軽い言葉選びをしてはいけない。
皐月家に住まわせてもらってるんだから、気持ちの尊重は大事。
そう思うと、いつもと違って考えるのが難しい。
「いま・・・なにしたの」
「キスも知らない?初心だねぇ」
・・・いや、知ってるんだけど。
「口づけっていうんだよ。好きな人にするの」
「・・・好き同士じゃ、ないの」
「ん-・・・まぁ、そうだよね。我慢できなかった」
あはは、と笑い飛ばす毬兄。
キスは、知ってる。
鈴兄にされたし、唇以外に。
でも今は・・・しっかり、唇にされた。
どういうつもり・・・?
「雫宮・・・僕の彼女になって、一緒に皐月家を継ごう?父さんは雫宮に継いでほしいみたいだけど・・・皐月家の長男と養子の雫宮が結婚して家を継ぐのが一番と思わない?」
・・・毬兄は家を継ぎたいんだ。
そんな私の考えを読んだのか、毬兄はゆるゆると首を横に振る。
「雫宮と一緒じゃなかったら、継がない。雫宮は跡取りだし、雫宮と付き合えるなら一緒に家を継ぐくらいの覚悟はあるよってコト」
「ふぅん・・・私もそれがベストだって思ったら、いーよ。・・・でも、しばらく考える期間ちょーだい」
「・・・わかったよ」
毬兄は納得したのか、仕方なそうに頷いた。
「おっと、チャイム鳴っちゃうね」
ほら、教室行かないと、と毬兄に急かされる。
「・・・ん」
私は毬兄に言われた通りに帰ったんだけど・・・。
高等部にいるはずの毬兄が何故中等部にいるのか。
それに気づいたのは授業が始まった後だった。