美形義兄×5! ~人間不信な姫の溺愛生活~
「さぁ、僕に呼ばれて息子たちも心配してるんじゃないかな?行ってあげて」
障子の向こうの気配を感じたのか、当主様が苦笑する。
「当主様は・・・」
名前を呼んで振り向いたとき。
「・・・僕が息子たちからの愛を求めるなんておかしいよね・・・」
当主様はそう呟き、どこか悲しげな、なにもかも諦めたような表情をしていた。
「・・・教えてくれてありがとうございます、」
せめてもの、私の温情。
「・・・お義父さん」
当主様は子供たちからの愛を望んでいる。
私は養子であって当主様の血を少しも引き継いでないけど・・・。
私の今の父は、この人だってことに変わりはない。
「大丈夫だった?父さんになんか言われてない?」
外にいたのは鈴兄で、心配そうに瞳を揺らして問いかけてくる。
それは・・・なにも話さずに終わるわけないと思うんだけど。
「鈴兄・・・ちょっと、お願いが」
もごもごと話す私を不思議そうに見るものの、鈴兄は人間不信の義妹からのお願いが嬉しそう。
「なに?なんでもするよ。なにか買ってほしいもの?いや、話の流れだと・・・父さんをさっさと帰らせたい?」
いや、当主様はいてもいなくても私に関係はない(多分)から大丈夫なんだけど。
「・・・を呼んでほしい」
「・・・ん?なんて言ったのか聞こえなかったなぁ」
鈴兄がわざとらしく笑って耳を近づけてくる。
当主様に勘付かれないように小声で言ったんだけど・・・聞こえなかったらしい。
「毬兄を呼んでほしい」
「・・・なぁんだ、聞き間違いじゃないのかぁ」
いつになく、鈴兄の間延びした口調は圧がある。
私が毬兄と会うのを阻止したいみたいだけど・・・。
・・・現実はそうはいかなかったようだ。
「雫宮、呼んだ?」
階段の曲がり角からひょこっと顔を出す毬兄。
「ん、前のコトで話があって」
「あ、父さんと話してベストだと思えた感じ?」
「・・・さぁ」
敢えて鈴兄の前では言葉を濁す。
「なに、話って」
鈴兄はのけ者にされてるのが不満なのか、低い声で訊いてくる。
「まぁ、僕と雫宮についての将来・・・ってね」
鈴兄が伸ばした腕をひょいとかわし、毬兄は私の手を取って歩き始めた。
「前はムードないところだったからなぁ・・・今回はしっかりしたところで聞こうか」
えーっと・・・なんかいい方向に解釈してるみたいだけど。
「・・・きれい」
思わず舌足らずになってしまうほど、綺麗に手入れされた花壇・・・というか庭。
「お嬢様にそう言ってもらえるとは・・・!頑張った甲斐がありました!」
近くに庭師の人がいて、私を見て涙ぐんでいる。
私ってそんなに感情ないと思われてるのか。
「ちょっと話があるから遠くに行ってくれるかな?」
「伊毬若様・・・かしこまりました。未来の皐月家のためにも、頑張ってください!」
「あはは、お見通しって感じかぁ・・・うん、頑張るね」
庭師さんに応援された毬兄は照れたように笑い、私を薔薇のアーチのほうに連れて行った。
「・・・で、雫宮が出した結論を教えてくれる?」
「・・・私は、毬兄と一緒に家を継ぐのがベストだと思えない、から・・・ごめん」
考えてみれば、最初から答えは決まっていた。
毬兄にはもっとふさわしい女性がいるだろうし、なにより・・・次期当主(仮)の私の夫になるにはまだ足りないかな・・・と思った。
もう少し腹の探り合いが得意になって当主様に似てきたら申し分ないだろうけど。
「そっか・・・残念だ。でも僕は、雫宮を追い続ける」
毬兄も口から出た言葉に驚く。
「皐月家の家系ではね」
毬兄は私の顔を見て困ったように話を始める。
「ファーストキスを捧げた相手を一生追い続けるんだ。稀に相手が結婚したら諦める人もいたらしいけど、ほとんどが離婚へ仕向ける。僕もそうするかもよ。雫宮と未来の旦那を離婚に追い込んで、僕と駆け落ちとか」
毬兄の自嘲気味な声音に少しずつ理解が追いつく。
「雫宮が結婚しても、きっと僕は諦められない。それは、許してほしい。・・・なにより」
色っぽく微笑む毬兄は自信ありげにほほ笑む。
「僕は雫宮にファーストキスを捧げた。・・・雫宮のファーストキスも、同時に奪えたんだから」
「・・・っ」
知って、るんだ・・・。
(元)お父さんとの話をしたからファーストキスはお父さんに奪われてると思ってるかと・・・。
「雫宮は今のところ誰にも傾いてないね。でも父さんの指示だったら僕との結婚もあり得る。・・・その時は受け入れてね?」
毬兄は少し気を使ったのか、あの時のように唇ではなく頬と額にキスを落として去っていった。
最後に向けられた笑顔は、清々しいほど・・・いや、吹っ切れたようなさわやかな笑顔だった。
障子の向こうの気配を感じたのか、当主様が苦笑する。
「当主様は・・・」
名前を呼んで振り向いたとき。
「・・・僕が息子たちからの愛を求めるなんておかしいよね・・・」
当主様はそう呟き、どこか悲しげな、なにもかも諦めたような表情をしていた。
「・・・教えてくれてありがとうございます、」
せめてもの、私の温情。
「・・・お義父さん」
当主様は子供たちからの愛を望んでいる。
私は養子であって当主様の血を少しも引き継いでないけど・・・。
私の今の父は、この人だってことに変わりはない。
「大丈夫だった?父さんになんか言われてない?」
外にいたのは鈴兄で、心配そうに瞳を揺らして問いかけてくる。
それは・・・なにも話さずに終わるわけないと思うんだけど。
「鈴兄・・・ちょっと、お願いが」
もごもごと話す私を不思議そうに見るものの、鈴兄は人間不信の義妹からのお願いが嬉しそう。
「なに?なんでもするよ。なにか買ってほしいもの?いや、話の流れだと・・・父さんをさっさと帰らせたい?」
いや、当主様はいてもいなくても私に関係はない(多分)から大丈夫なんだけど。
「・・・を呼んでほしい」
「・・・ん?なんて言ったのか聞こえなかったなぁ」
鈴兄がわざとらしく笑って耳を近づけてくる。
当主様に勘付かれないように小声で言ったんだけど・・・聞こえなかったらしい。
「毬兄を呼んでほしい」
「・・・なぁんだ、聞き間違いじゃないのかぁ」
いつになく、鈴兄の間延びした口調は圧がある。
私が毬兄と会うのを阻止したいみたいだけど・・・。
・・・現実はそうはいかなかったようだ。
「雫宮、呼んだ?」
階段の曲がり角からひょこっと顔を出す毬兄。
「ん、前のコトで話があって」
「あ、父さんと話してベストだと思えた感じ?」
「・・・さぁ」
敢えて鈴兄の前では言葉を濁す。
「なに、話って」
鈴兄はのけ者にされてるのが不満なのか、低い声で訊いてくる。
「まぁ、僕と雫宮についての将来・・・ってね」
鈴兄が伸ばした腕をひょいとかわし、毬兄は私の手を取って歩き始めた。
「前はムードないところだったからなぁ・・・今回はしっかりしたところで聞こうか」
えーっと・・・なんかいい方向に解釈してるみたいだけど。
「・・・きれい」
思わず舌足らずになってしまうほど、綺麗に手入れされた花壇・・・というか庭。
「お嬢様にそう言ってもらえるとは・・・!頑張った甲斐がありました!」
近くに庭師の人がいて、私を見て涙ぐんでいる。
私ってそんなに感情ないと思われてるのか。
「ちょっと話があるから遠くに行ってくれるかな?」
「伊毬若様・・・かしこまりました。未来の皐月家のためにも、頑張ってください!」
「あはは、お見通しって感じかぁ・・・うん、頑張るね」
庭師さんに応援された毬兄は照れたように笑い、私を薔薇のアーチのほうに連れて行った。
「・・・で、雫宮が出した結論を教えてくれる?」
「・・・私は、毬兄と一緒に家を継ぐのがベストだと思えない、から・・・ごめん」
考えてみれば、最初から答えは決まっていた。
毬兄にはもっとふさわしい女性がいるだろうし、なにより・・・次期当主(仮)の私の夫になるにはまだ足りないかな・・・と思った。
もう少し腹の探り合いが得意になって当主様に似てきたら申し分ないだろうけど。
「そっか・・・残念だ。でも僕は、雫宮を追い続ける」
毬兄も口から出た言葉に驚く。
「皐月家の家系ではね」
毬兄は私の顔を見て困ったように話を始める。
「ファーストキスを捧げた相手を一生追い続けるんだ。稀に相手が結婚したら諦める人もいたらしいけど、ほとんどが離婚へ仕向ける。僕もそうするかもよ。雫宮と未来の旦那を離婚に追い込んで、僕と駆け落ちとか」
毬兄の自嘲気味な声音に少しずつ理解が追いつく。
「雫宮が結婚しても、きっと僕は諦められない。それは、許してほしい。・・・なにより」
色っぽく微笑む毬兄は自信ありげにほほ笑む。
「僕は雫宮にファーストキスを捧げた。・・・雫宮のファーストキスも、同時に奪えたんだから」
「・・・っ」
知って、るんだ・・・。
(元)お父さんとの話をしたからファーストキスはお父さんに奪われてると思ってるかと・・・。
「雫宮は今のところ誰にも傾いてないね。でも父さんの指示だったら僕との結婚もあり得る。・・・その時は受け入れてね?」
毬兄は少し気を使ったのか、あの時のように唇ではなく頬と額にキスを落として去っていった。
最後に向けられた笑顔は、清々しいほど・・・いや、吹っ切れたようなさわやかな笑顔だった。