キャバ嬢メルメの花と仁義
キャバ嬢メルメの花と仁義 10 盃
「ミナアさん
来てくれて嬉しい、ありがと」
「うん、マミアちゃん」
「久しぶりだね」
「今日会議でね、その流れでね」
「そう、食事は?」
「シュンと軽く」
「そうですか」
「うん」
「どうしたの、元気ない?」
「いや」
・・・
シュンはミナアのお供で
何度かキャバHの間口を跨いでいる
1月半前ほどにフリーでメルメの接客を受けた
指名するのは初めてだった
メルメはハツト店長と相談の上
入梅の頃からある接客術を特化させていた
「いらっしゃいませ
シュンさん」
「メルメちゃん」
「何にしますか」
「焼酎水割りを」
「はい」
「ありがとう」
「今日は親分とご一緒ですか?」
「お、おやぶん?じょ、上司かな」
「親子の盃は交わされてるのですか?」
「さ、さかずき?!交わしてない交わしてない。ただの上司と部下!」
「そうですか。シュンさんはたしかハミル組の若衆でしたよね」
「わ、わかしゅ?!いや、僕普通の会社員。ハミルカンパニーの社員!」
「そうですか。前に話してた社内の抗争はどうなりました」
「・・・こ、これ、乗ったほうがいいの?」
「何のことですか」
「う、うん。まだ少し揉めてるかな、まだ戦争中」
「そうですか、ミナアの親分と盃を交わして舎弟になるのもいいかもしれないですね。有利になるかもしれません」
「しゃ、しゃてい!?・・う、うん。でもまだそこまでの絆は」
「そうですか」
「メルメちゃん、どうしたの。前はこういう感じでは」
ハツトが遠くから笑っている。
任侠映画好きのメルメとハツトが思いついた接客術だった。
この風変わりな接客は元来口下手なメルメを饒舌にさせた。
メルメは面白がった客の指名を梅雨の時期に3名ほど獲得していた。
シュン以外にだ。
「私、いつかメルメ組を持ちたいんです」
「メルメ組?」
「はい、そしてキャバ長になって勢力を拡大し、日本制覇したいんです」
「す、すごいね。キャバ長」
「はい、まずはここキャバHが本キャバになるので此処で認められて長を持たせてもらえるように」
「ご、極道・・」
「ワシャテッペン取ったるわ・・」
「・・・」
「ささ、呑んでください」
「は、はい、いただきます」
・・・
ミナアの顔は疲労の土色を隠せない
仕事だけでなく、内憂外患の日々だ
「ウチの娘がな」
「娘さん?」
「グレちまった」
「えっ、いくつですか」
「高二だ。帰りも遅いし、口も聞かない」
「でも、その年頃はよくあることじゃない」
「うん。そうなんだが。あいつのは少し・・」
「そうなの?」
「あゝ、元々は素直で賢い子だったんだがな」
「そう、私もその頃は父親とはほとんど話さなかったよ」
「うん、そうだよな。 反抗期だ」
その頃
シャヤはマルメンライトを咥えて暗闇の中赤い炎を灯した
シャヤの愛した河川敷だった
川のせせらぎと煙のくゆみが心を落ち着かせた
リャリャが隣にいた
まだこの頃、シャヤの小判鮫だった優等生のリャリャは
差し出されたフィルターについた紅に
煙草より接吻したかった
紅に抵抗できず
口紅を吸った
・・・・
控室には30人の嬢の
6月最終順位と年齢が貼られていた
1.ヒノメ 23
2.アオナ 22
3.キラコ 24
12.マミア 23
23.メルメ 21
29.ミドリ 26
・
本キャバ キャバH
ここは当然ヒノメがキャバ長だ
店長のハツトは、その後本部長へ役職を上げることになる
此処を本家として・
半年後の師走にはスリットドレスのキラコがキャバ長となりキャバKをOPENさせた
9ヶ月後弥生には涙のアオナがキャバ長。キャバAを開店させる
1年後入梅の頃にはキャバM
メルメとマミア
ミドリはキャバHに残る
・
キャバ長は・・・マミア
メルメの親友のマミアだ
その頃メルメもマミアもキャバHのトップキャストとなっていたが、譲った
親友で歳上、キャリアも長いマミアを立てた
メルメはキャバMのキャバ頭に就いた
メルメとマミアの二人は盃を交わし
姉妹の契りを結んだ
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