幸せを噛み締める私たちは
「あー、そこの最後の伸ばしもう少し早く切ってくれない?」

「、、分かりました。」

そこ、私の少しこだわってた所なのに

重い指を無理矢理動かす

胃がキリキリ痛む

「完璧ね。これで今年の発表会も受賞間違いなしね」

「そうでしょうね」

きっと、先生の言う完璧は楽譜としての完璧さだ

私らしさなんて1つも求めていない

香澄の弾くピアノめっちゃくちゃ好き

、、、なーにが私の弾くピアノが好きだ

どれだけ好きでも感情を込めて演奏したって誰も私より超えた演奏をした人なんて

何一つ思入れもない、この空っぽな私の演奏に劣っていると世の中では評価されてしまう

そんな世界が私は大っ嫌いだ

「、、って、事だから当日気を付けてね。お嬢様?、、香澄お嬢様?」

「あっ、はい。わかりました」

「指には気を付けてね。では、また失礼します」

部屋が静まり返る

机の上には演奏者の一覧とプログラムの書いてあるパンフレットが置いてあった

どうせこんなの見たって去年とあまり大差なんてないのに

引き出しの奥底にしまい込む

私の人生どこで変わるんだろう、、














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