幸せを噛み締める私たちは
朝比奈瑠夏side

、、、眠い

ここの来て10分。既に眠い

明日頑張ればいっか

展示を見ている舞の近くに行く

「舞、私ちょっとトイレ行ってくる」

「分かったー。行ってら〜」

よしっ

そそくさと建物を出てすぐ隣にあるお店に歩き出す

店内に入ると中にはたくさんの弦楽器が並んでいた

中に入ると楽器だけではなくかわいいステッカーなども売っていた

「あっ!それ可愛いですよねー」

「っっ、、!」

手に持っているステッカーを床に落としてしまう

「あっ!すみません。つい声かけちゃって」

明らかにしゅんとなる店員さん

絶対クラスとかだと陽キャの人じゃん、、

コミュ力高そ、、

「ギターお探しですか?」

ふわふわした髪が横に揺れる

「あ、いえ。既に1本持ってるので」

「へーそうなんですか!てことはよく演奏したりするんですか?」

「あ、いや。私は聞く専門でギターは貰ったんです」

「なんでその人はあげたんでしょうねー」

少し遠い目で独り言のように言った

「よく居るんじゃないんですか、、?」

「意外とそーじゃないんですよ。うち、買取もやってるんだけどほら!このコーナー!是非買ってね」

「あ、はい、、」

「それでね。結構みんな渋々手放すんですよ。この前なんて2時間くらいに店内で悩んで売らなかった人だっているくらい」

そんな人いるんだ

でもなんで、手放したくないんだろう

目の前の買取品コーナーとに行くと沢山のギターやベースが置いてあった

楽器には元持ち主が貼ったであろうステッカー

著名人のサインまで書いてあった

「、、、思い出」

「あぁっ!!それですよ!それ!だからみんな手放したくないんだー」

凄く納得したように手をポンっと叩く

「なら、凄くいいですね!」

「え、、?」

「だってそんな大事な物譲ってくれたんですから。信頼されていて愛されているんだなぁー、って思いまして」

店内に並んでいる楽器を見回す

「、、ほんとに、そうでしょうか」

「そうですよ!私は買い取るだけの身でその楽器の思い出全て知ってる訳ではないですが、そんな私でさえ思入れがある事を実感してるんですよ」

「、、、、。」

よく、時々私は言葉が出ない事がある

思った事をすぐ言えなくて

感情がぐちゃぐちゃになって

「これ、買います」

「あぁ!それ、北海道限定ステッカーですね!私が作ったんですよ!」

今はきっと嬉しくて、悲しい気持ちで埋まっている

「これ、凄く可愛いです」

「ありがとね〜」

袋を持ち出口の前に行く

もし、気持ちを伝えられないなら

「また、今度来ます」

「ほんとですか?ありがとうございます!!」

「次は、たっくさん思い出の詰まったギターを持ってきます」

行動で示すしかないと思う

「そうですか、なら売りに来ないでくださいね!」

ブンブン手を振ってお見送りをしてくれる

ペコッと1つお辞儀をして外に出る

「このステッカーどこに貼ろっかな」

「あっ!!瑠夏みつけたー!!」

「っっ、、!」

前から舞が走ってくる

「もーっ!絶対トイレじゃなかったよね?!」

後ろから香澄も歩いてくる

もうちょっと早く帰ればよかった

「もう早く帰るよっ!」

手を掴まれて舞の行く方向に従っていく

「これ、どこに向かってる、、?」

なんかさっきと全然別の場所に行ってる気がする

「えー?もう勉強の時間はおしまい!次はみんなで遊ぼうって話になって」

角を曲がると目いっぱいに数々のアトラクションが広がる

舞が満面の笑みで振り返る

「みんなで遊ぼ!」

「本当は、こんな所行っちゃダメだけどね」

「えぇ〜?香澄だってちょっと楽しそ〜な顔してたけどー?」

「はいはいーさっさと、入場するよー」

「ツンデレ香澄ちゃんだ〜」

2人が楽しそうに会話をしながらゲートへと向かっていく

「瑠夏ー?行かないの〜?」

2人が振り返る

「ううん。行く!」

昔の自分に言ってあげたい

______もう大丈夫だよって
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