幸せを噛み締める私たちは
朝比奈瑠夏side

迷ってしまった。

薄暗い部屋に取り残される

ポツンと不気味な音が響く部屋に立ちすくむ

迷宮だからみんなここに来ないだろうな

近くにある椅子に座ってみる

意外と座り心地がいい

「あっ、そうだスマホ」

ポケットに手を入れて探してみる

「あ、舞に預けちゃった、」

特に友達も居ないし必要ないと思って

癖だな

「しゃあなし」

1人で納得する

背もたれを前にして座り直す

目を閉じてこれからを想像してみる

誰か、探しに来るかな

香澄とか来そう

なんて、予想しながらまた考える

(なにか楽しい事、ワクワクすること考えてる。そうするといつの間にか終わってる。すげぇだろ)

独りなるとよくこの言葉が私の頭の中を駆け巡る

楽しいこと、ワクワクすること、、

なんか無いかな

不気味な音が部屋に響く

過去を遡ってみる

「ドタドタドタ、、」

あれ、何にもな

「バンッッ!!」

いきなり壊れかけのドアが勢いよく開く

「居た!!」

目の前に居る龍星くんと目が合う

「なんでそんな余裕そうなんだよ!」

「え、結構居心地いいから?」

なんでここにいるかって聞かれると、なんとなく

「ガチかよ、そんなことより早く帰んぞ!ここ怖すぎんだろ」

手首を掴まれそのまま連れられて行く

「がち怖ぇ、、」

扉を出た所でピタッと止まる

「あれ?どうやって出るんだ??」

お化け屋敷に入って初めてゾクッとする

道も分かんないのになんで私を探しに来たんだ

「...真っ直ぐ行って右」

「お前道分かってんじゃねぇかよ」

「そこ左行って後ろ下がる」

「後ろ下がんのかよ、絶対ここゾンビ出てくる、、」

なんか、お化け屋敷堪能してる気がする

「そんなに怖い、、?」

「いや、怖ぇよ!」

謎にほぼ初対面の人にキレられる

「...なんかごめん」

「なぁ、なんで道分かんのに帰ってこないんだよ」

「さぁ...なんででしょう」

手を引かれながらいりくんだ道を進んでいく

「お前、顔と性格合わないって言われねぇか?」

「...言われたことない」

というか、一度も私の性格のことなんて言われたことない。

「えぇ〜ガチかよ。ぜんっぜん理解できねぇ」

「…そんな事言ったら、龍星くんだってうちの学校通ってるとは思えない口の悪さだと思うけど」

以前手は引かれたまま

「あぁ?やんのかてめー」

ゴールへと進んで行く

「んで、なんで帰っこなかったん?」

「そんなに気になる?」

「そりゃ気になるだろ。そのお陰で俺はこの嫌いなお化け屋敷にいる訳だし?」

「…昔、迷子になったら動くなって言われたから、それだけ」

「ふはっ、、そんな理由かよ、おもろ」

「あ、着いた」

「え?ここ、リタイア口だけど?」

「ずっと怖がってたから、リタイアしたいのかなって」

あれ、違った、、

「あははっ、、、まじかよ、、」

急に笑いだし始める

「ごめん、違かった、、?」

「いや、ありがとな。ガチ怖かったわ」

…この人、愛されてるな

なんて、思ってしまった

誰にでも優しくて、カッコ悪くて

「ううん。私を探しに来てくれてありがとう」

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