幸せを噛み締める私たちは
「プルルル、、プルルル」

スマホに純恋の文字が表示される

「はい。もしもし」

「送迎の車が着きました。」

「それ、10分待って」

「でも、その後にピアノのレッス」

途中で電話を切る

「で、なに?」

「プルルル、、プルルル」

「返事欲しいなーって思って」

心とは裏腹にニコッと笑顔で言う

「付き合わない。これでいい?」

時計の音が教室に響く

「俺がばら撒くかもよ」

この本心が見えない笑顔から嫌いだ

「どーぞ。ご勝手に」

まだ脅したいのかこの人は

私は、もうこの生活が終わったっていいのに

「最初とは全然違う言い分だね。何か心変わりでもあったの?」

「別に。言いたくない」

手元でスマホを操作し始めた

本当にばら撒くのか

「ごめん、間違えて消しちゃった」

首を傾げてニコッと笑っていた

「、、、は?」

この人はさっきから何を言ってるのだろうか?

「これで、言い分が変わった理由教えてくれる?」

「え、いや、、」

言葉につまる

こんな疑問の為にわざわざ録音を消した?

理解が出来ない

「そんな事したら、私と付き合えなくなるよ、、?」

「元から付き合う気ないでしょ?」

私はとんだ見当違いをしていたのかもしれない

「そうだよ。私はあんたと付き合う気なんてない。」

この人は大馬鹿者だ

そうだ。あの人も大馬鹿だった気がする

だから分かりやすく突き放さないと

「あっ!10分経っちゃった」

外を見ると校門前に黒い車があった

「さようなら。氷室くん」

これで、いつものように何の変哲もないつまらないあくびさえも出ないほどつまらない日常に戻るんだ

十分だ

「最後に1つ!」

「なに?」

振り向かず返事をする

どうせ、ろくでもな

「香澄の弾くピアノめっちゃくちゃ好き」

目を見開く

「、、、っっ!」

さっきから私の心を狂わせないでよ

グッと手を握る

目を閉じ1つ呼吸をする

「ばーか。この学校では敬語が基本でしょうが」

彼は、さっきとは違う笑顔を見せていた

「その裏の顔剥げる前に転校したらどーでしょうか」

この時私は何も知らなかった。

「ふふっ、確かにね」

彼がどんな気持ちでここまで来たのか

その胡散臭い笑顔の裏にはどんな気持ちがあったか

私は知らな過ぎた。

馬鹿は私だ。

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