天才外科医は仮初の妻を手放したくない
私は陽斗に付き添い、萩原の所に行くことにした。
萩原は自分の住んでいるマンションに立てこもっているそうだ。
白い10階建てのマンション。
その3階に彼女の部屋はある。
警察は部屋の前まで行くと、ベルを押して陽斗に話をする言うに促した。
「俺は西園寺陽斗だ、お前の要望通りここにいる。今からそこへ行くから引き換えに雫を帰してくれ。」
少しして部屋の中から小さな声が聞こえてきた。
「陽斗さん、私はあなたをずっと待っていたのよ。なぜ私に気が付いてくれないの。雫ちゃんが欲しければ、まずはあなたが部屋に入って来て。」
鍵がカチャリと開けられたので、陽斗はそこから部屋の中に入ったのだ。
そして、次の瞬間、雫をドアの隙間から外に出したのだった。
「雫!雫!」