天才外科医は仮初の妻を手放したくない
陽斗は救急で西園寺の病院に運ばれた。
萩原も脈は弱くなっていたが、心肺蘇生装置のお陰で息を吹き返したのだった。
雫は迎えに来てくれた陽斗の両親が預かってくれることになった。
そして、病院では大久保が待ち構えていたのだ。
「大久保さん、陽斗さんを…陽斗さんを助けてください…お願いします。」
大久保は私の言葉に大きく頷くのだった。
それから陽斗の手術はもう5時間を超えようとしている。
誘拐の話を聞いて理久が駆け付けてくれていた。
理久は私の手を握って話をする。
「あいつは絶対に大丈夫だ。澪を絶対に悲しませないで守ると言っていたじゃないか。男の約束は守る奴だと俺は信じているよ。」
「理久、ありがとう。」
理久の言葉にほんの少しだけ温かい気持ちになったのだ。
陽斗さんは約束を絶対に守ってくれる人なのだ。
それからどれくらい時間が経ったのだろう、手術が終わったと看護師が知らせてくれた。
私達は急いで手術室の前に向かった。
すると少しして大久保が手術室から出て来た。
「澪さん、やれることは全てやった。後は西園寺次第だと思う、だから西園寺に付いていてやってくれ。」