天才外科医は仮初の妻を手放したくない
私は意識が戻らない陽斗の手を両手で握りしめた。
「陽斗さん、私を一人にしないでください。お願いです…目を覚ましてください。」
私は呪文のように、何度も何度も同じ言葉を陽斗に掛けていた。
しかし、起きない陽斗に悲しさが込み上げて、泣いてはいけないのに泣き出してしまったのだ。
すると、突然握っていた手を陽斗が握り返してくれたのだ。
「陽斗さん!陽斗さん!」
何回も名前を呼ぶと、陽斗はゆっくり目を開けたのだった。
そして、小さな声で私に名前を呼んでくれたのだ。
「…澪。」
私は嬉しくて、寝ている陽斗に抱き着いた。
すると陽斗は私の頭を優しく撫でてくれたのだった。
「陽斗さん…良かった。」