天才外科医は仮初の妻を手放したくない
萩原もほぼ同時に、目を覚ましたいようだ。
一時は危なかった萩原だが、救命処置が良かったために助かったのだ。
私は目を覚ましたと言われる萩原の病室にも行ってみた。
「萩原さん…あなたはどうしてこんなバカな事をしたのですか。」
萩原は私から目をそらした。
そして微かに聞こえる声で話始めたのだった。
「あなたがいけないのよ…あなたが私から陽斗さんを奪ったのよ。私が選ばれるはずだったのに…それなのになぜなの。」
私は近くに寄って萩原に話をすることにした。
「私はもともと陽斗さんの婚約者の代わりだったんです。でも偶然に仮初めの夫婦になることとなり、それがきっかけで親しくなりました。」
「…っえ?」
「私だって最初は偽物だったんですよ。でも話をするうちにいつしか彼に惹かれるようになりました。私は彼の見た目に惹かれているのでもないし、家柄でもないです。陽斗さん自身を愛しています。」