天才外科医は仮初の妻を手放したくない
それから一週間後、陽斗は奇跡的に早い回復で、今日はもう退院できるという。
「陽斗さん、退院おめでとうございます。」
「うん、ありがとう。僕はあの時、澪の声が聞こえたんだ。澪が泣いていると思ったら、寝ていらえない気持ちになったんだよ。」
「陽斗さん、本当に生きていてくれてありがとう…そして今回のことは申し訳ございませんでした。」
陽斗は私の頭をポンポンと叩いた。
「さぁ、雫を迎えに行こう。俺たちの宝物だからな。」
病室を出ようとした時、外科医の大久保が入り口に立っていた。
陽斗は大久保に向かって頭を下げた。
「今回はおまえが助けてくれたんだよな…ありがとう。」
大久保は口角を少し上げた。
「最後はお前の気力だよ。…澪ちゃんと雫を守るという気持ちが傷を回復させたんだ。」
すると、陽斗は少し得意気な顔をした。
「まあな…守るものがあるっていいぞぉ…お前も早く結婚してみろ。」
「西園寺からそんな言葉が出る日が来るとはな…恐い恐い。」
二人は肩をたたき合って笑っていた。