天才外科医は仮初の妻を手放したくない
一通り病院船の説明が終わったころ、診療所のある島が見えて来たのだった。
ここはいくつもの島々が近くにある一帯だ。
その中でも陽斗がいた診療所は、この辺りの島の中では一番大きな島にあるのだ。
船が島に近づくと、懐かしい島の景色が見えて来た。
島の人達は船に向かって手を振ってくれているのが分かる。
大久保は興味深い顔で陽斗に話し掛けた。
「あの島が西園寺のいた診療所がある島か?」
「ああ…そうだよ。結構いい島だろ。」
「そうだな、海も綺麗だし、良い島だな。」
島に着くと診療所の医師である、日下部と藤村が病院船を出迎えてくれた。
「西園寺先生!こんいちは。」
日下部は嬉しそうに陽斗に挨拶している。
藤村も負けずに横で頭を下げていた。
陽斗は大久保を連れて二人の元へ向かった。
「藤村君、日下部君、こちらは僕の同僚で大久保医師だ。よろしくな。」
大久保は紹介されると笑顔を二人に向けた。
「天才外科医の西園寺ほどではないが、おれもそこそこ有名な凄腕外科医の大久保です。ヨロシク。」