天才外科医は仮初の妻を手放したくない
私はずっと夢を見ていた。
陽斗と出会った日に戻っていたのだ。
しかし、陽斗は私に声を掛けず、他の女性に新婦役を頼んでいるのだ。
陽斗は私が見えていないように、他の女性に手を差し伸べている。
私がいくら呼んでも声が届かないのだ。
近くに居るのに声が届かない悲しさで涙が止まらないのだ。
そんな時、遠くで私を呼ぶ声が聞こえる。
「澪!」「澪!」
私が答えても気づいてはもらえないのだ。
その時、私の手を温かく握ってくれる手があるのだ。
その手はとても温かく、しっかりと握ってくれている。