天才外科医は仮初の妻を手放したくない
陽斗はシャワーを浴びているようなので、その間にコーヒーを淹れておくことにした。
豆から挽く本格的なコーヒーは実家でよく父親が飲んでいたのだ。
小さい頃からそれを見ていたので、コーヒーの淹れ方には少し自信があったのだ。
陽斗はシャワーを終えて、浴室から出ると、すぐにコーヒーの香りがしたようだ。
香りに誘われるように陽斗が近づいて来た。
「なんかコーヒーの良い香りがするが、澪が淹れていたのか?」
「はい、陽斗さん。珈琲豆が何種類かあったのでお好きなのかな?と思ったのです。勝手にすみません。」
すると陽斗は目を細めて微笑んだ。
「俺はコーヒーが大好きなんだ。仕事を終えてシャワーを浴びたらまずはコーヒーをいつも飲んでいたんだよ。嬉しいな。」
陽斗はカップに注いだコーヒーの香りを楽しんだ後、一口コーヒーを口に含んだ。
コーヒーが好きと言っていたので、好みに合わなかったらどうしようと心臓がドキドキと音を立てる。
少しして、陽斗は満面の笑みを浮かべてくれた。
「澪はコーヒーを淹れるのが上手だな。今まで飲んだ中で一番うまい!」
「そんな、大袈裟です。でも、ありがとうございます。」
陽斗が喜んでくれることがすごく嬉しかった。
陽斗が喜ぶと不思議に自分も嬉しくなっていたのだ。