天才外科医は仮初の妻を手放したくない

速い電車に乗って約2時間。
海が遠くに見える懐かしい街並みが目に飛び込んでくる。

就職してからホテルの仕事が忙しく、ほとんど実家に帰っていなかった。

理久の家と私の実家はすぐ近くだが、こんなに遅い時間にいきなり帰ったら両親も驚くだろうと言われ、今日は理久の家に泊めてもらう事になった。

理久の家は、小さい頃から何度も遊びに行ったり、勉強を教わりに行っていた。
ただ今日は理久に告白されたこともあり、なんだか緊張する。

理久の家族はすでに寝ていたので、理久が客間に布団の用意をしてくれた。

「本当は俺の部屋に寝かせたいが、澪の返事をもらうまでは今まで通りのお兄ちゃんでいるから安心しろ。」

理久の優しい笑顔を見ると、小さい頃から安心できた。

「ありがとう…理久。」

「ゆっくり休めよ。」

理久の用意してくれた布団はとても温かく感じていた。




「おはよう、澪。」

「まぁ…澪ちゃん。昨日来ていたなら起こしてくれれば良かったのに…さぁさぁ一緒に朝食を食べましょう。」

翌日の朝、理久とご家族は突然訪問した私を温かく迎えてくれた。

「理久と澪ちゃんが今でも仲が良かったなんて、嬉しいわね。うちは娘がいないから、澪ちゃんが理久と結婚して娘になってくれたらとても嬉しいわ。」

夜遅くに理久と一緒に帰ってきたことで、理久の両親は私達のことを誤解しているようだ。
否定してよいものか、何と言って良いのか戸惑ってしまう。

「母さん、澪が困っているだろ。俺と澪はそんなんじゃなくて、ただの幼馴染なんだからな。」


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