天才外科医は仮初の妻を手放したくない
「今日は楽しかったぁ…早紀ちゃんご馳走様でした。お二人はこれからも仲良くね。」
私が陽太と早紀に手を振ると、一緒に理久も手を振った。
理久はだいぶお酒を飲んでしまったようで、少し酔っている。
幸い私達の家はここから歩いて15分くらいだ。
理久と一緒に家に向かってゆっくり歩き出した。
「澪、俺は少し酔っ払いだ。手を繋いでくれないか。」
確かに理久はよろよろと千鳥足である。
「もう、理久はしょうがないなぁ。」
ふらふらと危ない理久の手を引くように私は手を繋いだ。
小さい頃、逆に理久がよく私の手を引いて家まで連れて帰ってくれたことを思い出した。
「理久!やっと家が見えて来たよ!」
理久は私に手を引かれて半分寝ているような状態で歩いていたのだった。
そして、家の前に到着すると、いきなり私にハグをした。
「ちょ…ちょっと理久!しっかりしてよ!」
理久を自分から離して家に送り届けようとしたその時、私の名前を誰かが呼んだのだった。
「…澪。」