天才外科医は仮初の妻を手放したくない

「陽斗さん、お帰りなさい。」


陽斗が帰って来たのは夜の9時をすでに回っていたが、今日は一緒にご飯が食べたくて待っていたのだ。


「澪、夕食を待っていてくれたのかい。」

「はい。陽斗さんと一緒に食べたくて。」


すると陽斗は意外な表情を見せたのだった。
口に手を当てて頬と耳が赤くなっているように見える。


「なんか嬉しいもんだな。澪が俺と一緒に食べたいなんて言ってくれると、すごく嬉しい。でも今度からは先に食べていてくれよ、澪がお腹空かせていないか心配になるからな。」


今日はお母さん直伝のカレーライスとポテトサラダだ。
カレーの中にトマトやオクラなど沢山の野菜をいれるのが、実家の母の得意料理だ。
ポテトサラダもマヨネーズは少量で塩コショウを効かせた大人の味になっている。


「澪、このカレーすごく美味しいな、なんか体に優しい味がする。」

「はい、実家の母が教えてくれたんです。ポテトサラダも美味しいですよ。」


陽斗が美味しそうに食べる姿をみると、とても嬉しい気持ちになり自然と笑顔になる。


「澪は料理が上手なんだな。…そうだ、今度一緒に料理を作らないか?いろいろ澪に教えて欲しい。」

「はい、では一緒にお買い物から行きませんか?素材選びも楽しいですよ。」


安藤が言っていたことは、こういう事なのかも知れない。
何か特別な事じゃなくても、お買い物に一緒に行って欲しいとおねだりが出来たのだ。



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