天才外科医は仮初の妻を手放したくない
一通り買い物を済ませると私達はレジに並んだ。
今は自分で清算するセルフのレジが増えている。

セルフのレジでマイバックを用意した私は、レジでバーコードを読ませ始めた。
やはり陽斗は目を大きくして見ている。

そして最後に清算しようとしてレジにお金を淹れようとした時、陽斗は慌てて私に質問をした。

「澪、このレジは現金じゃないとだめなのか?」

「いいえ、カードとかも使えますけど…。」

すると陽斗は自分の財布からカードを取り出し、私に渡した。
これで清算してくれないかな。

「これくらいは私が払いますよ。」

陽斗は頑なに首を横に振った。

「これから生活費は俺が払うからな…そうだ、澪に俺の支払いになるカードを作ろう。」

買物を終えて陽斗がマイバックを肩にかけて歩き出そうとした時、隣で荷物を詰めていたおばあちゃんが私達に声を掛けた。

「優しくてイケメンなご主人ねぇ。羨ましいわ。きっとパパになっても良いパパでしょうね。」

おばあちゃんはニコニコとしながら歩いて行ってしまったが、私と陽斗はお互いに顔を見合わせた。
考えてみたら、夫婦なのだからこれから先に子供も生まれるかも知れない。
なんだか考えたら恥ずかしくなってしまった。

「澪は良いお母さんになるだろうな。」

「陽斗さんだって良いお父さんになりますよ、きっとね。」

二人で言い合いながら笑ってしまった。

でも、心のどこかでそんな幸せな未来を想像したのだった。


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